捨てられ仮面令嬢の純真
「――なるほど。それは早急に調査するべきだな」
帰宅したレオは、おずおずと事案を報告したセレスに大きくうなずいた。
「そんなことに気づいてくれるなんて、さすがセレスティーヌだ。俺では見逃しかねん」
「とんでもないです。レオさまこそ……妹がご迷惑をおかけしているのに対処してくださって」
「……それは、誰に聞いたんだ」
ミレイユが王宮を揺らしているのを謝罪され、レオは厳しい顔をした。それはセレスのせいではないのに、どこから聞いて謝っているのか。
レオが愚痴を聞かせたダニエルでは、とにらむ。執事は口角を下げしかめ面をした。「奥さまの身内をくさすような事は申しません」と首を横に振って示す。セレスはオドオドと言い訳した。
「あ、あの。父の手紙です。ミレイユが望んだら殿下がこうして下さった……とか、いろいろ報せがありまして」
レオが渋い顔をしたら、セレスはあっという間に表情を曇らせるのだった。レオは片眉を上げる。
(セレスティーヌは何故こんなに自信がないんだ。俺の機嫌をうかがってばかりで)
はたから見れば申し分のない女性なのに。
セレスがこうなったのは、もしや――リュシアンにいつも馬鹿にされていたからでは。そのことに思い至ってレオの腹は怒りで煮えくり返った。
(俺の妻は聡明で気づかいにあふれ、清楚なんだ! 女にさっさと体を求めるような殿下にはわからんだろうがな!)
みずからの押しの弱さを棚に上げ、レオはリュシアンを罵倒する。不安げなセレスに向かってレオは断言した。
「殿下たちの結婚式はつつがなく行われる。セレスティーヌは何も心配しなくていい。当日は俺も隣にいるから大丈夫だ」
「――はい」
セレスが微笑んでくれて、レオはなるべく頼れる笑みを返した。だが内心では、軽い嫉妬にさいなまれている。
(……ダニエルめ、そんなにセレスティーヌと仕事をしているのか。ずるいぞ、俺が忙しくしている間に)
そんなことを言われてもダニエルも困るのだが、レオはわりと本気だった。