捨てられ仮面令嬢の純真
「村の入会地で無断伐採……近隣で犯人見つからず。ビルウェン王国との国境の村ですな」
「森林を守るのは村の生命線だわ。村人の誰かではなく、よそ者の仕業なら――」
「よほど食い詰めた者が別にあるとおっしゃいますか」
「そういうのはいずれ略奪や戦につながります。今のうちに対処できればよいのですけど」
はっきり言わないが、セレスは隣国から入り込んだ人間がいるのではと懸念していた。ビルウェン王国との国境など不確かなものだと歴史が教えてくれる。
現地のようすを詳しく知りたいと思った。だがセレスが行くのは難しいし、レオは今それどころではない。
「砦に指示を送り調べさせるよう、レオさまに相談なさってはいかがでしょう」
「そうね……でも本当にお忙しそうで。私などが話しかけるのが申し訳ないの。それよりゆっくりお眠りになってほしくて」
「いえ、奥さま」
ダニエルは断固として反論した。
「ご夫婦の会話をおろそかになさってはいけません。レオさまは、きっと奥さまとお話するのを楽しんでいらっしゃいますよ」
「そうかしら……ありがとうダニエル」
にっこり笑うセレスからは、レオへの好感がにじんで見える。ダニエルは胸をなでおろしたが、同時に「どっちも奥手だと本当に面倒くさい」と真顔で考えた。