捨てられ仮面令嬢の純真

 リュシアンへの不満は国家予算の話だけではない。さまざまな事柄の事務処理に関しても、リュシアンは理由をつけては後回しにしたがった。周囲がしっかりしていないと、政務はすぐ滞る。

(あの愛嬌だけの妹では、それを挽回するような王妃にもならんだろうし――)

 リュシアンに虐げられながら必死に公務に立ち向かっていたセレスのことを、マティアスは高く評価していた。だから弟の恋路を応援し、二人をくっつけたのだ。セレスに共感してしまったのは、マティアスも似たように報われない境遇だからかもしれない。

(――俺もできれば、馬鹿夫婦の下から抜け出したいものだ)

 マティアスの脳裏に、ある願望が頭をもたげる。
 それは実現不可能なものではなかった。リュシアンに何かあった場合のスペアとして存在するのがマティアス。それが王位継承権を与えられている理由だ。
 現在ミレイユは妊娠中だが、子が生まれる前なら――。
 瞳をやや暗くしてマティアスは考えた。
 このまま新王が評判を落とし続けてくれれば、あるいはそんな未来もあり得るのか。
 一度思いついてしまったら、マティアスの思考は止められなかった。


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