私を拾ってくれますか?
「今度は飯!」
「め、めし?」
立ち尽くす私の手を引っ張り、また更衣室に投げ込まれる。汗をかいたならシャワーで汗を流しても良いと言われたので、有り難くそうさせてもらい、体も心もさっぱりしてジムを出る。
先に外で待っていた奈垣くんに駆け寄ると、〝シャワー浴びたんだ〟と、言っていないのに当てられた。表情が明るくなっていたらしい。変わった超能力だな。
ジムを出て立ち寄ったのは、コンビニ。奈垣くんは手慣れた様子で棒のついたアイスを手に取ると、〝飯田は何食べたい?〟とアイスコーナーを指差される。コーンの付いたアイスを手に取ろうとしたけど、旭と半分こして食べたことを思い出して、その隣にあったパウチに入ったアイスを選ぶ。せっかく動いてさっぱりしたのに、汗がねっとり背中を流れた気がした。
「いただきます」
「どうぞー」
奈垣くんにご馳走になり、コンビニの前で座り込んでアイスを頬張る。水分と糖分を欲していた体が、お目当てのものが入ってきて満足したようで、汗もだんだんと止まった。
「動いた後のアイス、最高だよな。背徳感薄いっていうかさ」
「確かに。美味しさも違う」
隣に座る子怪獣は、棒付きのアイスを捕食みたいに、取られるものかと必死に食べていて、その姿が思わず笑える。奈垣くんを見ていると、心の奥底に強くしがみついていたものが、少しずつ剥がれていくように感じる。
「今日はありがとう」
「どういたしまして。俺で良かったら、いつでも付き合いますよ」
その後、奈垣くんと必要以上の会話はせず、黙々とアイスを食べた。二人の沈黙の時間は、苦じゃなかった。