私を拾ってくれますか?
ジムは初体験で、何をどう扱ったら良いかも分からない。奈垣くんに付いて行って同じように機械に触れば…なんて甘い考えの私は、ランニングマシンでさえも、機械に遊ばれている感覚で、ヘロヘロ。
止めて転けるように床にへたり込み、息を整えながらベンチプレスでパンプアップを楽しむ奈垣くんを観察する。きついはずなのに笑顔だし、終わった後は発達した筋肉を触って頷いている。クラスのみんなにも、あんな風に愛想を振り撒けば良いのに。ちゃんと優しそうな男の子に見える。
「筋肉バカだ…」
息をまだ切らしながら言ったことだし、どうせ自分の筋肉に惚れている最中だから聞こえていないだろうと思っていたけど、ベンチプレスを置いてこちらにやってくると、低い声で一言。
「誰がバカだって?」
地獄耳だ。手を差し伸べてもらい、その手を掴んで立たせてもらう。フラフラで上手く立てない。
「どう?動くのに必死で、何も考えられないでしょ」
そう言われれば、旭のことを考える暇もなく、目の前の機械に遊ばれていた。〝あっ…〟と思わず声を漏らすと、目尻に皺を寄せて私を笑う。