私を拾ってくれますか?
朝のような盛り上がる会話もなく、ただ家までの道を歩く。旭は私より1歩後ろを歩いていて、私の歩くペースに合わせてゆっくり歩いてくれている。
「朝の人のこと、聞いても良い?」
朝の人。奈垣くんのことかな。下駄箱で私をじっと見ていたのを、旭も分かっていたんだ。
「奈垣くんだよ」
「その人、星にキスしようとしてたやつ?前は何でもないって言ってたけどさ。違うよね」
「…何でもないよ」
「何でもない人なら、そんな悲しそうな顔しないよね?」
私、悲しそうな顔してるの?顔のパーツを触っても分からないし、自分の胸に聞いても分からない。旭はそんな私を見て、笑ってるし。
「俺のせいだよね。あの人怒ってるんだよ。あの時の俺にそっくりだもん」
「旭は関係なくないかもだけど、怒らなくても良くない?」
「星は分かってない。好きな子の隣に自分じゃない子が居た時、すげぇ辛くて悲しいんだよ。なのに本人は何でもないように振る舞ってる」
それは私も経験した。奈垣くんの隣にマネージャーさんが居た時、自分の気持ちに気づいたんだもん。でも怒りは湧かなかった。
「ちゃんと話し合えよ。勝手に想像してるだけじゃ、勘違いのまますれ違うから」
「うん…。紗奈にも言われたけど、話しかけても逃げちゃうんだよ。全然話せない」
「ならメールでも送ってみたら?手紙とか書いて、先に気持ちを伝えておけば良いじゃん」