私を拾ってくれますか?
「怪我、痛そう」
「別に痛くねぇよ。こんなんいつもだし」
あの高い声。またマネージャーだ。中を見たくなかったけど、もう目の前まで来ていたし、見たくなくても見えてしまう。
奈垣くんの席の隣の机をくっつけて、密着している。マネージャーとの距離が近くて奈垣くんの顔は見えないけど、ほんの少し体を動かすだけで振り払っている様子はないし、完全に嫌というわけではなさそうに見える。
「私のことは避けるくせに…、あの子は良いんだ」
言葉にすると、更に虚しくなった。マネージャーは奈垣くんの腕に自分の腕を絡ませて嬉しそうに話しかけているし、ボクシングという共通点がある2人とは対照的に、私には何もない。
手に持っている手紙をチラッと見て、仲良さげな2人を見て。また手紙に視線を落とした。
この手紙、もう渡さなくて良いや。付き合ってるわけじゃないのに、この心の曇りは何なのか。話しかけても無視して怒っている奈垣くんが、今の私には理解できる。