からかわないでよ、千景くん。
「いいから、交代しよ」
千景くんが立ち上がって、私を奥の方にやる。
心配というより、子ども扱い?
でも、ひたすら優しいのは分かる。
こういうとこも、好き。
何気ない仕草に、胸がきゅっとなる。
「どうして、ここに来たの?」
千景くんが少し顔を傾けて、私の方を見る。
答えられなくて黙ってると、 「ん?」って、口角を上げて笑う。
その顔が、愛おしくてたまらない。
好き。
さっきまで考えてたことなんて、全部杞憂だったのかも。
千景くん、なんだか機嫌がいい?
ちょっと安心しかけた、その時。
「良かったね。笹村と走れて」
……前言撤回。機嫌がいいわけじゃなさそう。
その言葉に、心がズキッとした。
千景くんの目が、少しだけ遠くを見てる気がする。
どうしてそんなこと言うの?
私が走りたかったのは、千景くんとだったのに。