からかわないでよ、千景くん。
千景くん、私のこと好き?



昼休み。
教室の隅っこ、窓際の席。
志緒ちゃんと並んでお弁当を広げる。いつも通りのはずなのに、胸の奥がざわついてる。



「昨日、千景に会えた?」


「うっ…!!」



思わず、口に入れた卵焼きが喉に詰まる。
咳き込む私を見て、志緒ちゃんが慌てて背中をさすってくれる。



「ちょっと、大丈夫!?」



うう…。志緒ちゃん、私はいろんな意味で大丈夫じゃないよ…。

昨日のことが、頭の中でぐるぐる回る。




今日の朝、顔を合わせた瞬間。


「なずな」

「…っ、志緒ちゃーん!」


千景くんの声が耳に届いたけど、私は無視してしまった。
逃げるように志緒ちゃんの名前を呼んで、千景くんから目をそらした。
授業中もずっと視線を感じたけど、気付いてないふりをした。



「ちょっと、何があったの?」



志緒ちゃんはウキウキしてる。恋バナの匂いに敏感な志緒ちゃんは、何かを察してるみたい。

でもね、志緒ちゃん。
そんなに嬉しい話じゃないんだよ。私の心は、今、ぐちゃぐちゃで。


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