からかわないでよ、千景くん。
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1年の冬。
教室の空気は、少し冷たくて、でもどこか静かで落ち着いていた。
席替えで、隣になったのは―― 喋ったことのない子。
確か、名前は……月城なずな。
授業中、ふと暇になって、なんとなく彼女を観察してみることにした。
月城さんは、いつも一生懸命に板書してる。
ペンを走らせる手が、真面目さを物語ってる。
そして、すぐ顔に出る性格。
驚いたり、笑ったり、困ったり。
表情がくるくる変わって、見ていて飽きない。
おもしろい。
ある日、授業中。
月城さんの消しゴムが、コロコロと転がって、俺の足元に落ちた。
……やば。
いつも彼女のことを見てたから、今拾ったらそれがバレる。
瞬時に顔を逸らした。
でも、月城さんはどうしていいかわからないみたいで、あたふたしてる。
机の下を覗き込んだり、手を伸ばしたり。
その姿が、なんだか小動物みたいで。
可愛くて、つい頬杖をついて観察してしまう。
すると――目が合った。
その瞬間、ドクン!
胸が跳ねた。
まるで心臓が、彼女に反応したみたいに。