からかわないでよ、千景くん。
「千景くんの方が…私のこと分かってないもんっ…」
「分かんないよ。今まで、ずっと俺の方が好きだったから。両想いなんて、未だに奇跡としか思えない」
千景くんが、悲しそうにそう言った。
その目を見て—— 気付いた。
私、千景くんに 全然気持ちが伝わってないって思ってたけど——
ほんとは、私の方が千景くんの気持ちを信じてなかった。
「ゴホッ…帰る。 なずなも、気を付けて」
千景くんは、階段を降りていく。
私は、 立ち尽くしたまま。
千景くんのさっきの言葉が、頭から離れない。
「……私、最低だ」
好きなのに。信じてほしかったのに。
信じてなかったのは—— 私だった。
千景くんの背中が、遠くに消えていく。
その背中を、追いかけたいのに—— 足が動かない。