からかわないでよ、千景くん。



「千景くんの方が…私のこと分かってないもんっ…」


「分かんないよ。今まで、ずっと俺の方が好きだったから。両想いなんて、未だに奇跡としか思えない」



千景くんが、悲しそうにそう言った。

その目を見て—— 気付いた。

私、千景くんに 全然気持ちが伝わってないって思ってたけど——
ほんとは、私の方が千景くんの気持ちを信じてなかった。



「ゴホッ…帰る。 なずなも、気を付けて」



千景くんは、階段を降りていく。
私は、 立ち尽くしたまま。

千景くんのさっきの言葉が、頭から離れない。



「……私、最低だ」



好きなのに。信じてほしかったのに。
信じてなかったのは—— 私だった。


千景くんの背中が、遠くに消えていく。

その背中を、追いかけたいのに—— 足が動かない。


< 232 / 277 >

この作品をシェア

pagetop