からかわないでよ、千景くん。
「だい、すき……千景くん」
「ん」
短く答えた千景くんは、また少し口角をあげて、いたずらっぽく笑う。
「まだ足りないから、もっと言ってよ。なずな」
そう言って、ちゅ、と軽く触れるキスを落としてくる。
「……あ、やば。またしちゃった」
べっと舌を出して、意地悪な顔。
もう、絶対確信犯。
千景くんの笑顔が、ずるくて、優しくて—— また、胸がきゅっとなる。
こんなにドキドキしてるの、ぜんぶ千景くんのせいだからね。
「それで?結局なんでなずなは怒ってたのか、 もう一回ちゃんと言って?」
「さ、さっき言った……」
「よく覚えてないし」
千景くん、ほんとに熱あるの……!? 全然なさそう。むしろ、元気すぎない……?
「なずな、聞かせて」
柔らかくて、甘い声。その響きに、胸がぎゅっとなる。
「……ほんとは、平さんと仲良くしてほしくない。でも、千景くんに重いって思われたくもなくて……」
言葉にするのが、怖かった。嫌われるかもしれないって、ずっと心の奥で怯えてた。