からかわないでよ、千景くん。
「……俺、なんかした?」
「えっ?」
千景くんの言葉に、思わず目を見開く。
さっきのこと—— 覚えてないの?
あんなに、私のこと欲しがってたのに。
“……ごめんね。止まれない”
“……今、抑えられる理性、持ち合わせていないかも”
千景くんの言葉が、 頭の中でフラッシュバックする。
ドキドキして、死んじゃうかと思ったくらい。
それなのに—— 当の本人は、何も覚えていないなんて。
「……私が、千景くんに大好きって言ったことも覚えてない?」
平さんに嫉妬したことも。寂しかったことも。
「覚えてないなー」
千景くんは、クスっと笑ってそう言った。
絶対、これは覚えてる。
「……もう一回言って?」
千景くんの甘い声。熱を帯びた目に、まっすぐ見つめられる。
もう、何も言い返せなくなるんだから。