からかわないでよ、千景くん。
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大事な時に、熱を出した。
声を出そうとすると、咳が止まらない。スマホを見る気力もなくて、ただ、天井を見つめてる。
「……くそ」
なずなの顔が、ふっと思い浮かぶ。
あー、会いたい。
今すぐ、なずなの声が聞きたい。手を握ってほしい。「大丈夫?」って、笑ってほしい。
昨日、かなり酷いことを言ったと思う。
“笹村が隣の席でよかったね”なんて—— 一ミリも思ってないくせに。
体育祭のときから、これっぱっちも変わってない。
なずなが、俺じゃない他の男と楽しそうにしてると、ムカつく。胸がざわついて、どうしようもなくなる。
なずなの感情、全部俺で動かせればいいのに。
笑うのも、怒るのも、泣くのも—— 全部、俺のせいであってほしい。
それくらい、 なずなのことが好きなんだよ。
なずなのことが、好きすぎて。
そうじゃなくても、好きな子をいじめるなんて、ひねくれてる性格だって、自分でも分かってる。
でも—— もっともっと、俺でなずなの頭の中をいっぱいにしたかった。
たとえそれが、嫉妬の感情だとしても。
平さんに嫉妬してるなずなが、可愛くて。
「仲良くしないで」って言ってほしかった。
「私だけ見て」って—— そんな言葉を、なずなから聞きたかった。
でも、そううまくはいかなくて。
なずなの気持ちを試そうとした俺が悪い。
分かってる。
でも、そうでもしないと——
なずなは、俺でいっぱいになってくれないでしょ。
どうしたって、俺と同じ気持ちになってくれないから。
俺は、なずなのことばっかり考えてるのに。
なずなの笑顔も、声も、仕草も、全部。
俺の中は、なずなで埋まってるのに。
なずなの中に、俺はどれくらいいるんだろう。