からかわないでよ、千景くん。
目を閉じて、仰向けになっていると、家のチャイムが鳴り響いた。
こんな時に誰だよ……と、 無視しようと思ったけど、なんとなく玄関まで重い足を動かす。
扉をあけると——
「……え」
目の前には、なずな。
やばい。嬉しい。ほんとに?
「心配だったから。返信もなかったし、顔見たくて」
手には、コンビニの袋。中には、あったかそうな飲み物とか、のど飴とか、ゼリーとか—— 俺のこと、ちゃんと考えてくれてるものばっかり。
俺のために買って来たの? 息、切れてるし。走ってきたの?えー……。
嬉しい気持ちと、帰ってほしい気持ちが交差する。
風邪、うつすわけにはいかないし。なずなの体調まで崩したくない。
「ありがたいけど……帰って」
冷たくそう言ったつもりだった。
でも、なずなは——
少し怒ったような顔をしながら、強引に家に入ってきた。
靴を脱いで、迷いなくリビングへ一直線。