からかわないでよ、千景くん。
は、恥ずかしいっ……!
……って思った瞬間。
「えっ。まさか……?」
志緒ちゃんが、口をあけたまま固まった。
え? あれ……? なんか、様子がおかしい。
……もしかして、勘違いしてるっ!?
「ち、ちがうの!そういう意味じゃなくてっ!」
慌てて手を振る私に、志緒ちゃんがじーっと見つめてくる。
「……なずな、あんた、どこまで進んでんのよ」
「すすんでないっ!なにもっ!」
顔が真っ赤になるのが、自分でも分かる。
ああもう、なんでこんなこと聞いちゃったんだろう……!
「私のなずながっ……!」
志緒ちゃんが、ちょっと大げさに叫ぶ。
「し、志緒ちゃんっ……そうじゃなくて、 ちょっと興味が……あって……」
ごにょごにょと言い淀んでると、志緒ちゃんが深く深呼吸。
「まあ、私はね?付き合って長いしね? もちろん経験はあるよ?」
……そっか。志緒ちゃんは、ちゃんと大人なんだ。
「でもなずな、そもそもさ……何するか知らないでしょ?」
「え、っと……」
うん。 志緒ちゃんの言う通り。知識が、まったくありません。
好きな人と、もっと近づきたいって思うけど—— その“近づく”って、どういうことなのかも、ちゃんとは分かってない。
でも、知りたい。千景くんのこと、もっと知りたいし、 もっと好きになりたいから。