からかわないでよ、千景くん。



「心配だよ、私は」



志緒ちゃんの声が、ちょっとだけ真剣で、ちょっとだけ優しい。



「うっ……でもね、どうしても千景くんの全部がほしいのっ!」



自分でもびっくりするくらい、はっきり言い切ってた。

今回、平さんにやきもちを焼いて—— 千景くんと仲直りして—— 分かったんだ。

私、やっぱり…… 千景くんともっとくっつきたいっ!
千景くんの全部がほしい。もっと千景くんにも、私を求めてほしい。



「なずながそんなことを想う日がくるなんてっ……!」



志緒ちゃんが、目をまんまるにして驚いてる。

でも、ほんとなんだよ。
千景くんの笑顔も、声も、仕草も、全部—— 私だけのものにしたいって思っちゃう。



「……千景くんは、そうは思ってないかなぁ?」



ぽつりとこぼした私に、志緒ちゃんが即答する。



「いや。それはない、絶対に! ただ……大事にしたいとは思ってるだろうね」



うん。それは、私もなんとなく分かる。

千景くん、なんだかんだいつも止まってくれるし。私が嫌なことはしてこないし——
この前は、熱があってぼんやりしてたから、ちょっと際どかったけど。
でも、ちゃんと止まってくれた。私のこと、ちゃんと見てくれてるって思った。



「でも、なずな分かってる?いろんな意味で」



志緒ちゃんが、少しだけ真剣な顔で言う。

……いろんな意味?


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