からかわないでよ、千景くん。
「なづなの荷物取りに行ってる間に、千景はもういなくなってたんだけどね。なんであんなことになってたの?」
志緒ちゃんの問いに、私は言葉が出なかった。
教室から保健室に行ったことは覚えてる。
でも、そのあとどうやってベッドに入ったのかは、ぼんやりしてて。
ただ、保健室で目を覚ましたときのことは、はっきり覚えてる。
千景くんに、後ろからぎゅっと抱きしめられて。
そのまま、眠りに落ちた。
恥ずかしくて、ドキドキで、どうにかなりそうだったけど—— それでも、すごく安心した。
あの腕のぬくもり。耳元の声。
全部が、夢みたいだった。
…でも、夢じゃなかったんだ。
「なずな、顔真っ赤だけど…熱ぶり返した!?」
「してない、してない…大丈夫…!」
「…あ〜!さては、保健室のこと思い出してたな!?何があったのか言いなさい!」
「なんにもないよ〜…!」
机に突っ伏して、必死にごまかす。
だって、私だって何がどうなって千景くんが隣で寝てたのか、ほんとに分からないんだもん。
ただ、あのぬくもりだけは、ちゃんと覚えてる。