からかわないでよ、千景くん。
ドキドキしちゃうよ、千景くん。



10月上旬。
今日から、体育祭に向けての練習が始まった。

月末にある体育祭。

クラスで出る競技が決まって、私は——

二人三脚と、借り物競争に出ることになった。

二人三脚は、全員参加。だから、逃げようがなかった。


(運動、ほんとに苦手なのに…)


できるだけ、みんなの迷惑にならないように。
注目されないように。
こっそり終われる競技がよかった。
パン食い競争とか。


でも——



「なずなのパン食い競争…ハムスターみたいになりそうだね」



千景くんが、笑いながらそんなことを言ってきたことを思い出す。


(なにそれ…!)


からかわれて、顔が熱くなる。
恥ずかしいし、ちょっと悔しい。

だから、イヤイヤだけど—— 残っていた借り物競争に出ることにした。



(ほんとはパン食い競争がよかったのに…)



千景くんのせいで、また振り回されてる。


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