からかわないでよ、千景くん。



「かわいすぎて、待ちきれないな」



目の前でクスクス笑ってる千景くん。

その言葉に、脳がフル回転する。


(なにが起こったの、今…?)


頬に残る感触。

心臓の音が、うるさすぎて思考が追いつかない。



「ねぇ。なずなはさ、俺のことただの意地悪なやつだと思ってない?」


「…………お、思ってないよ?」


「…じゃあ、なんでか分かる?こんなに意地悪したくなる理由」



じんわりと熱くなった頬に触れる。

…分かんない。

分かんないから、困るんだよ…千景くん。



「てか、なずなここにいて大丈夫?弁当食べたの?」



その言葉で、ハッと思い出す。



「いっ、行きます!」



勢いよく立ち上がって、千景くんの顔を見ずに階段を駆け下りた。

背中に、千景くんの声が届く。



「また、ここで待ってるね」



上から手を振る千景くん。

その姿を見ないようにして、ただ走った。

なにがなんだか分からない。

でも、頬に残る感触が、全部を思い出させる。


顔が赤くなっているのを感じながら、私は教室へ向かった。


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