からかわないでよ、千景くん。



(ごめんね、志緒ちゃん…)


男子が一人余ってたらしく、運動のできる笹村くんが、私と組んでくれることになった。


(申し訳なさすぎる…)


笹村くんは、爽やかで優しくて。
なのに私は、運動音痴で、さっきも盛大にずっこけたばかり。


長ズボン履いてたから、膝は守られたけど—— それでも、恥ずかしさは守れなかった。


(ほんとに、私でよかったのかな…)


体育の授業が始まるたびに、申し訳なさと不安で胸がぎゅっとなる。

でも、笹村くんは笑ってくれる。
「大丈夫だよ」って言ってくれる。



「月城さん、もう一回走っとく?」



水分補給から戻ってきた笹村くんが、足に巻くマジックテープを持ってやってきた。

私は、思わず目をそらした。



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