からかわないでよ、千景くん。



「左からね」



笹村くんの掛け声に合わせて、ゆっくりと足を動かす。

最初はぎこちなくて、タイミングがずれるたびに肩が揺れた。

でも、何度か繰り返すうちに——

段々、足の回転が速くなっていく。



「さっきよりもできてんじゃん!いい感じ!」



肩を組みながら、笹村くんが笑って言った。

その言葉に、胸がじんわりあったかくなる。


(できてる…私、ちゃんとできてる…!)


運動音痴な私でも、少しずつ前に進めてる。

うれしい。私も、できてる気がする。

さっきまでの不安が、少しずつ溶けていく。


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