からかわないでよ、千景くん。



「このまま、先生がいるところまで戻ろうか」



笹村くんがそう言って、私たちは走り出した。

足の回転は、さっきよりもずっとスムーズで。
肩を組んで、息を合わせて。あとちょっとで、ゴールだった。


でも——

その“あとちょっと”で、転んだ。



「いっ…た」



手はついたけど、左膝に違和感が走る。 ズキッとした痛み。



(え…石!?)



膝を見ると、小さな石が転がっていて。
そのせいで、マジックテープも外れてしまっていた。



「2人とも、大丈夫か!?」



先生の声が飛んでくる。



「いって〜!」



笹村くんがそう言った。


(私のせいで…!)


私が転んだから、笹村くんまで巻き込んでしまった。せっかくうまくいってたのに。せっかく優しくしてくれてたのに。


(最悪だ〜…)


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