からかわないでよ、千景くん。
もう、いっぱいだよ、千景くん。
ある日の朝。
教室へ向かっている途中、すれ違った2人の子の会話が耳に入った。
「千景くん、また振ったらしいよ」
「うちらにもまだ望みある?」
(え…振った?)
千景くんって、この学校に一人しかいないよね…? “また”ってことは、何度も…?
胸がざわついた。
教室に入ると、千景くんはまだ来ていなかった。
(さっきの話…気になる)
でも、誰に聞けばいいか分からない。
「なずな、おはよー!」
「おはよー、志緒ちゃん」
志緒ちゃんなら、何か知ってるかもしれない。
でも——
(志緒ちゃん、千景くんのこと…あんまりよく思ってないよね?)
でも、気になる。すごく、気になる。