からかわないでよ、千景くん。
「次の練習は、ゆっくり走ろうな」
笹村くんが私の頭を軽く撫でて、友達のところへ行ってしまった。
その手の感触が、ふわっと残ってる。
「さすが笹村。爽やかだな〜」
志緒ちゃんが、ぽつりとつぶやく。
(ほんとに…笹村くんの周りだけ、違う世界みたい)
明るくて、優しくて。 みんなが自然と笑顔になる空気。
「私は笹村を応援してるけど…なずなが千景を選ぶなら…」
志緒ちゃんが、考えるように言った。
さっきから、ほんとに何の話をしてるの?
すると、チャイムが鳴って、志緒ちゃんは自分の席へと戻っていった。