からかわないでよ、千景くん。
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昼休み。
私は、いつもより倍のスピードでお弁当を食べ終えた。
「ちょっと職員室行ってくるね!」
志緒ちゃんにそう言って、席を立つ。
(…ごめん、志緒ちゃん)
嘘をついたことに、少しだけ胸が痛む。
でも、それ以上に—— 千景くんの言葉が、ずっと頭から離れなかった。
「なずなは、一生俺のものだよ」
その意味を、ちゃんと聞きたかった。
千景くんがいるであろう、あの場所へ。屋上に続く階段。
今日も、そこに千景くんはいた。
(…来ちゃった)
足音に気づいたのか、千景くんがゆっくりこちらを振り向いた。
その瞬間、胸がドクンと鳴った。