からかわないでよ、千景くん。
「私、気持ち悪いかなぁ…?」
ぽつりとこぼれた言葉は、自分でもびっくりするくらい弱かった。
千景くんのいないところで、周りから聞いた話。
それだけで、こんなに胸が痛くなるなんて—— おかしいのかなって思った。
「千景くん、また振ったらしいよ」 「うちらにもまだ望みある?」
朝、すれ違った女の子たちの会話。
きっと、誰かが千景くんに告白したんだ。
それだけのことなのに、胸がズキズキして、涙が出てきた。
(私、これ以上千景くんに嫌に思われたくないのに)
「泣いちゃうの?はは。かわいー」
千景くんは、繋いでない方の手で私の涙をぬぐった。