からかわないでよ、千景くん。
「朝、すれ違った女の子たちが話してたから気になって…」
私は、正直に話した。
千景くんは、なぜか嬉しそうな顔をしていた。
「今まで、一回もこんなこと聞いてきたことないよね」
そう言いながら、私の左手をそっと取る。
千景くんの大きな手に、私の細い指が包まれる。
「…っ、」
心臓が跳ねる。指先がじんわり熱くなる。
「なずな、俺が何してたか気になってるの?」
千景くんの声は、少しだけ弾んでいた。
(なんでそんなに嬉しそうなの…?)
私は、ずっとモヤモヤしてたのに。
朝の会話も、千景くんの言葉も。 全部が気になって、胸がざわついてた。