なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
*プロローグ* なりそこないのシンデレラ
二階の奥、西日が差し込む突き当りの部屋。そこには、お父さんに買ってもらった木目の本棚。大好きな本を並べた、自分だけの小さな図書館。
お父さんは事故で亡くなった。もう、会うことはできなくても、お父さんがくれたたくさんの思い出。大切に愛された記憶。
思い出のアルバムを覗き込むみたいに、本のページをめくって、寂しさを慰めてきた。眠れない夜に読み聞かせてもらったおとぎ話、自由研究で活用した図鑑、誕生日にプレゼントしてもらった流行のファンタジー小説。
ぜんぶぜんぶが、私の大切な宝物。
宝物、だったのに。
ある日学校から帰ったら、本棚は捨てられていて、防音のピアノ室になっていた。
お父さんが愛したはずの女性は、美しい面差しで笑った。
「本なんて、図書館で借りれば、いくらでもタダで読めるでしょう? いらないわよね」
言葉を失って立ち尽くす私に、あのひとは続けた。
「お姉ちゃんの大事な時期なのよ。真理菜ちゃんも、お姉ちゃんにピアニストになってほしいって思うでしょう?」
優しい声で私の言葉を封じ込めて、あのひとは笑った。
「真理菜ちゃんは優しい子ね。天国のパパも喜んでいるわ」
お父さんは事故で亡くなった。もう、会うことはできなくても、お父さんがくれたたくさんの思い出。大切に愛された記憶。
思い出のアルバムを覗き込むみたいに、本のページをめくって、寂しさを慰めてきた。眠れない夜に読み聞かせてもらったおとぎ話、自由研究で活用した図鑑、誕生日にプレゼントしてもらった流行のファンタジー小説。
ぜんぶぜんぶが、私の大切な宝物。
宝物、だったのに。
ある日学校から帰ったら、本棚は捨てられていて、防音のピアノ室になっていた。
お父さんが愛したはずの女性は、美しい面差しで笑った。
「本なんて、図書館で借りれば、いくらでもタダで読めるでしょう? いらないわよね」
言葉を失って立ち尽くす私に、あのひとは続けた。
「お姉ちゃんの大事な時期なのよ。真理菜ちゃんも、お姉ちゃんにピアニストになってほしいって思うでしょう?」
優しい声で私の言葉を封じ込めて、あのひとは笑った。
「真理菜ちゃんは優しい子ね。天国のパパも喜んでいるわ」
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