中村の夏休み

第一話 無限の空へ、さあ行こう!



 夏休み初日の朝。
 窓の外からセミの鳴き声がシャワーみたいに降り注ぎ、中村勇太は勢いよく布団を蹴飛ばした。

「よしっ! 今日から俺たちの無限の冒険が始まるんだ!」

 寝ぼけ眼の母が「朝ごはん食べてから言いなさい」とぼやいたが、勇太の胸はすでに遠い“空”に飛んでいた。

 自転車をこぎながら向かったのは、親友・田中健司の家。
 チャイムを押すより先に、二階の窓がガラリと開いて、健司の寝癖だらけの顔が現れる。
漢字(かんじ)
「……中村。お前、何時だと思ってんだ」
「冒険に時刻表なんかねえ! さあ、無限の空へ出発だ!」

 勢いだけは宇宙ロケット級。しかし田中はため息をつき、渋々制服でもないジャージに着替えて出てきた。

 二人は川沿いの道を歩き、夏空を見上げる。
 雲はもくもくと膨らみ、まるで巨大な大陸のようだった。

「なあ健司。あの雲の向こうに、きっと俺たちの“空”があるんだ」
「はいはい。……で、今日はどこに行くんだ?」
「決まってる! 町の外れの廃工場! そこで秘密基地を作るんだ!」

 田中は頭を抱えた。けれど、口元は少し笑っている。
 こうして中村の夏休み第一日目、“無限の空”を探す大冒険が幕を開けた。



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この物語を書きながら、私自身も「青春ってなんだろう」と考える時間が多くありました。 夢を追いかけることは楽しいだけじゃなくて、不安や葛藤もつきものです。 でも、仲間と一緒に笑ったり、泣いたり、ぶつかり合ったりすることでしか見られない景色がある──そう思って、この小説を紡ぎました。 読んでくださったみなさんが、少しでも「青春っていいな」「もう一度、夢を信じてみようかな」と思ってくれたら嬉しいです。 この本を手に取ってくださったあなたに、心から感謝を込めて。

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