この歪んだ愛、いっさい油断なりません。
10話 警告と脅し
◯リビング・朝
朝ごはんを食べながらテレビを見てる鈴音。結都は先に学校に行ってる。
テレビで人気男性アイドルの熱愛発覚ニュースがやってるのが目に入る。今ものすごく勢いのあるアイドルグループのメンバーで、好感度がものすごくよかった。
その日、テレビだけでなくネットニュースにも取り上げられ、様々なSNSでも話題になってる。
ネットのコメント欄は批判的なものが多く、アイドルグループの公式SNSは炎上状態。
学校に向かう途中の電車でも、女子高生たちが熱愛アイドルの話をしてるのが聞こえる。かなりガッカリ、恋愛とかに興味なさそうなキャラだったからショック、推すのやめようかななどなど……。
鈴音(芸能人はイメージが大事っていうけど……。一度こうして取り上げられたら、応援してた子が離れていくのも一瞬なんだ)
もし自分が結都といるところをこうして記事にされてしまったら……と考える鈴音。気をつけないといけないなと気を引き締めるきっかけに。
*場面転換
◯結都のマネージャーの車の中・放課後
結都のマネージャー山室が運転する車で家に帰る結都と鈴音。結都の撮影が終わって家に送る途中、鈴音の学校に寄って途中で拾ってもらったような流れ。
後部座席で隣同士に座る結都と鈴音。結都は鈴音の肩に頭を乗せてべったりしてる。
山室「そういえば、例の熱愛が発覚したアイドルの活動どうなるんだろうかね」
結都「なんかニュースにでもなってんの?」
山室「ネットの記事はどれもその話題ばっかりだよ。SNSでもだいぶ大変なことになってるみたいだしなー。事務所も対応に追われてると思うよ」
結都「へぇ、なんか大変そうだね」
山室「結都も他人事じゃないからな? そういう記事が出たら一発アウトくらいに思ってたほうがいい」
結都「はいはーい」
山室「マスコミだけじゃなくて今は一般の人も動画とか撮ったりしてるから、そういう人の投稿から広がっていくこともあるから注意するように」
結都「俺が撮られるとしたら相手は鈴音しかないでしょ」
山室「まあ、結都と鈴音ちゃんは兄妹だから心配はしてないけどな」
鈴音(結都くんがこれからも変わらず活動を続けていけるように、わたしも気をつけないといけない)(それに……わたしと結都くんは兄妹……だから。たとえ、わたしが兄妹以上の感情を持っていたとしても、周りの目からはそう見られたらいけない)
*場面転換
◯バイト終わり・少し遅い時間
この日は葵と同じシフト、同じ時間に上がることに。鈴音が着替えて裏口から出ると葵が待っていた。
スマホを見ながら、鈴音が出てきたのに気づいて鈴音に目線を向ける感じ。
葵「あっ、鈴音先輩やっと出てきた」
鈴音「葵くんどうしたの?」
葵「じつは、鈴音先輩に見てほしいものがあって」
スマホで撮った動画を見せてくる。9話で鈴音が結都に会いたくて迎えに行った日の動画。動画にはバッチリ結都に抱きついてる鈴音が映ってる。
鈴音(なんで、葵くんがこんな動画撮って……)少し焦ってるのと、葵がどうしてこんな動画を撮って自分に見せてくるのかがわからない表情の鈴音
葵「いやー、鈴音先輩とユイって兄妹だっていうのは聞いてましたけど……」
葵が鈴音に近づいて、鈴音のブラウスの襟元を軽く引っ張る。
葵「兄妹なのにこんなことしていいんですか?」
鈴音の首元についてるキスマークを指差しながら言う葵。葵の表情は何か企んでるような笑顔。
葵「この動画ネットに載せたら一気に拡散からの炎上ですかね?」
最近炎上してたアイドルグループのメンバーのことや、マネージャーとの会話を思い出す(軽く回想が頭の中に流れる感じ)
鈴音(迂闊だった。感情に任せて行動したことによって、こんなことになるなんて)(冷静になれば気をつけることができたのに……)
これが世に出れば結都が築き上げてきたものが壊れてしまう。活動自粛など最悪の状況を想像してしまう。
鈴音「お願い、この動画のこと誰にも言わないで」
葵「ほんと鈴音先輩って頭悪いですねー。今ので完全に認めちゃったの気づかないなんてー。まだ言い訳できる余地あったのに」
葵は結都の勢いが落ちることを狙ってる。目立ってる人間が嫌い、おそらく結都にとって鈴音は特別だから鈴音が距離を置きたいと言えば結都が自滅するだろうって考え。
葵「黙ってる代わりに、鈴音先輩はユイから離れてくださいよ」
鈴音「葵くんの目的……なんなの?」
葵「このままユイが自滅していったら面白いなぁって」ここで葵の本性が全面的に出てる感じに
葵にはじつは高校3年生の兄がいて、駆け出しのモデル。ユイの勢いがすごすぎて、自分の兄が目立たないのが気に入らない。ユイのスキャンダルがないか狙っていた。
動画を握られてるので葵の言う通りにするしかないと思う鈴音。
せっかく結都が好きって気づいたけど、伝えちゃいけないと心に決める。軽率な行動は控えて、距離感を考えて接することを決める鈴音。
*場面転換
◯鈴音バイト帰り・外・夜
バイトから帰ってくると、家の前に結都のマネージャーの車が停まってるのに気づく鈴音。
鈴音(結都くん今帰ってきた……のかな)(タイミング悪い……)
結都が車から降りて家に入るまで、時間差で自分はもう一度帰ってきた道を戻ろうとする鈴音、そんな鈴音に気づいて声をかける結都。
結都「鈴音」
聞こえないふりして、走りだそうとする鈴音、すぐに結都が引き留める。
結都「鈴音どうした? なんで逃げようとすんの」
結都の呼びかけに振り向こうとしない鈴音。いつもの鈴音らしくないことい気づいた結都が後ろから優しく鈴音を抱きしめる。
結都「鈴音に無視されんのつらい」
こうしてるところも誰かが撮ってるかもしれない。誰が見てるかなんてわからない。勝手に不安が煽られていく。
鈴音(今は手を伸ばせばすぐ届く距離だけど……もしあの動画が拡散されて、事が大きくなって結都くんが遠い存在になってしまったら……)
今ある幸せを守るとしたら、自分ができることはたったひとつ。
鈴音(今ならまだ、気持ちに蓋をすることができる。この気持ちを隠すことで、大切にしてるものすべて守ることができるはず……だから)
抱きしめてくる結都の腕をゆっくり引き離す鈴音。結都のほうを振り返る(下向いたまま)
鈴音「は、離して……。こんなふうに触れるの、やめて」
結都「……は? 鈴音なに言って――」
鈴音「結都くんの距離感おかしいよ。こんなのよくない。ただの妹にこんなことするの違う……」
結都「俺は鈴音のこと妹なんて思ってない」
鈴音「わたしは……っ」
結都のことをただの兄としか思ってないって言いたいのに、つらくて言葉に詰まる鈴音。
鈴音(ちゃんと、言わなきゃ……。結都くんを守るには、こうするしかない――)
鈴音「結都くんのことお兄ちゃんとしてしか見てない。それに、きちんと家族になりたいと思ってる」
結都「……いつもの鈴音じゃない。何かあったなら俺に話して――」
鈴音「あと、わたし好きな人いる……から。もうこういうことしないで」
結都を強く突き放す。鈴音から突然告げられたことを受け止めきれない結都は力なくふらつく。
鈴音はそのまま走り出す。息を切らしながら走って涙が止まらない鈴音。
自分で告げた言葉に涙する鈴音がラストのヒキ。