この歪んだ愛、いっさい油断なりません。

6話 鈴音だけ




◯リビング・夕方
ソファに座る結都の上に鈴音がまたがって乗ってる感じ。結都は愉しそうな表情、鈴音は困りながら一生懸命な表情。学校から帰ったばかりなのでふたりとも制服。
ここだけ切り取ると鈴音が結都に迫ってるような感じに見えるように。
鈴音「ゆい、と……くん。じっとしてて!」
結都「んー、だって手が空いてるからさー」
結都の片手は鈴音の腰のあたりに回ってる感じ。もう片方は鈴音の頬をむにむに触れたり耳たぶに触れたりイジワルに遊んでる。
結都「ほらー、鈴音ちゃんやるなら早くね」
鈴音「もうっ、どうなってもしらないからね……‼︎」
ここで鈴音が手に持ってるのがピアッサーだとわかる感じで。
鈴音(そもそもなんでこんなことになっているのかというと――)


◯回想 数日前
さかのぼること3日前。結都にとって結構大きな仕事(有名なブランドとのタイアップ)が決まった。服からアクセサリーまで、すべてそのブランドの商品を使った撮影予定が控えてる。ただひとつ問題が発生。アクセサリーの中でピアスが結都にとって最難関。結都はピアスを開けてない。
鈴音(結都くんは痛いのがとくに苦手らしく……。なんとかピアスなしでいけないか交渉したけど、どうしても変更ができず……。事務所としてもこんなチャンス滅多にないので、無理にとは言わないけどできたら受けてほしいということで、結都くんはピアスを開けることになった……までは話がわかるんだけども)
結都『鈴音が俺のピアス開けて』
鈴音(なんて、とんでもない重大任務を任されてしまい――)


◯回想から戻る
鈴音(そして今、わたしはその重大任務中というわけで)
相変わらずイジワルそうに笑ってる結都。鈴音が自分のためにがんばってる姿が可愛いなと思ってる表情。
集中したいのに結都が邪魔してくるので、なかなか先に進めない鈴音。
鈴音(にしても、結都くんの顔ほんとにきれいだな……。さすが顔が天才的と呼ばれるだけある。女の子たちみーんな惚れちゃうのもわかる気がするし、ファンの子だったら、こんな距離で結都くんに見つめられたら卒倒すると思う。そう考えたら、わたしもだいぶ耐性がついてきたんじゃ?)
結都「あれー、鈴音ちゃん。俺に見惚れてる?」
鈴音「見惚れてるっていうか、顔きれいだなと思っただけ!」
結都「え、俺のこと好きって?」
鈴音「もしそう聞こえたなら耳鼻科行ったほうがいいよ」
結都「俺のこと好きすぎておかしくなっちゃう?」
もう何言ってもダメだの表情してる鈴音。
鈴音(ここはいったんスルーして、さっさとこの重大任務を終わらせよう)
鈴音「今度こそやっちゃうからぜったい動かないでね!」
結都「鈴音に痛めつけられるなら本望」
鈴音「それはだいぶ語弊あるよ……」
言い合いしながらも無事にピアス開けることに成功。
結都「俺のはじめて奪っちゃったね」
鈴音「だからぁ! 誤解招くような表現使わないで!」
結都の上に乗ってる状態からやっと解放される鈴音。
結都「ほんっと鈴音はなんでこんな可愛いんだろうねー?」
また鈴音にちょっかいかけ始める結都。鈴音の髪に触れて指先でくるくる遊んでる感じ。
いつも「可愛い」連呼してる結都に対して言い慣れてる感がなんとなく納得いかない鈴音。
鈴音「結都くんって誰にでも可愛いって言うの……?」
鈴音(あ……わたし何聞いてるんだろう)とっさに出てきた言葉に対してハッとしてる
今までだったらそんなに気にならなかったのに、結都が他の女の子に対しても同じことを言ってたら嫌だという気持ちが少し出てきてる。
結都「鈴音以外の子に言ったことないよ」
鈴音の髪に触れたまま、髪に軽くキスする結都。目線は鈴音のほうを見てる感じで。
結都「俺思ったことしか言わないし」


◯回想
マネージャー『最近鈴音ちゃんのおかげで結都のモチベさらに上がってるよ!』
数日前、結都の忘れ物をスタジオに届けに行ったときにマネージャーからそんな話を聞いた鈴音。 
結都は基本なんでも仕事受けるけど、女の子との撮影はずっとNGを出してる。
どうしてもってときは、あまり至近距離ならないようにしてるとか。
マネージャー『自分の近くにいていい女の子は鈴音ちゃんだけなんだってさ』『結都は鈴音ちゃんのことが可愛くて仕方ないみたいだね』


◯回想から戻る
結都「鈴音が可愛すぎて毎日大変なんだから」
そう言ってスマホのカメラロールを見せてくる結都。写真の多さに驚く鈴音。数ヶ月前まで写真ゼロだったのに、気づいたら3000枚越え。
しかもぜんぶ鈴音の写真ばかり。盗撮っぽいのも混ざってる。おまけにスマホのロック画面は鈴音の寝顔(隠し撮り)
鈴音(これ犯罪スレスレじゃない……⁉︎ しかもこのロック画面の写真いつ撮った⁉︎)
結都「俺の鈴音ちゃんぜんぶ可愛いでしょ」
鈴音「これ、他の人にバレたらどうするの⁉︎」
結都「んー、別にいいじゃん」
鈴音「よくないよ! 変な噂が立ったら仕事に影響とかーー」
結都「……じゃ、鈴音が四六時中そばにいてくれんの?」
鈴音(いや、なんでそうなる……⁉︎)
結都「四六時中そばにいてくれんの?」
鈴音(なんで2回も言った⁉︎)
結都「鈴音がそばにいないから俺こんなことしてんの、わかる?」
鈴音(甘い言葉でとことんかき乱してくるのが結都くんのずるいところだ)
結都「それに大丈夫だよ。なんかあったら妹ですって言えばどうとでもなるだろーし」
妹って言葉が今までそんなに気にならなかったのに引っかかる。
鈴音(そう……だよね。いくら結都くんと近くにいたって、わたしは妹でそれ以上になることなんかぜったいない)
少し落ち込んでる表情の鈴音。


*場面転換


◯バイト帰り道・夕方
結都のことがなんだか気になって、考え事をしていたら中学生くらいの男の子に道を聞かれる鈴音。
困っているのを放っておけず、目的地まで連れて行ってあげることに。
着いたのは明らか怪しい感じのビル。大学生くらいの男3人が待ち構えてた。道を聞くフリをして女の子を連れて行くのが目的。
鈴音(あぁ、よくあるやつ……。人助けをしようとしたらまんまと罠にはまって悪いやつらに連れていかれそうになる展開)
鈴音に逃げ場ない感じで大学生たちに囲まれてしまう。
モブ1「へぇ、結構可愛いじゃん!」
モブ2「俺めっちゃタイプかも」
鈴音(こんな手口に引っかかったわたしも人が良すぎたかもしれない。このあたりは駅から外れた場所だから、声をかけてくる人には注意しないといけないってずっと気をつけてたのに)
結都のことで頭いっぱいになって、そこまで気が回らなかった。
一瞬の隙をついて逃げ出そうとする鈴音。走って逃げるけど転んでしまって追いつかれてしまう。
モブ1「はいはーい、逃げないでおとなしくしてね」
モブ2「おとなしくしないと俺たち何するかわかんないよ?」
モブ3「大丈夫だって! 俺たちと愉しいことしよ、ね?」
鈴音(むりむり、ほんと無理……。逃げたいのに脚に力入らないし、声もうまく出てこない。周りに助けを求めたいのに、無力な自分が嫌になる)
転んで座り込んでる鈴音をモブたちが抱きかかえて連れて行こうとした瞬間、結都が現れる。
結都「……その子、俺のなんだけど。離してくれない?」かなりブチギレてる感じで。
モブ1「は、なんだこいつ――」
結都「離せって言ってんの……聞こえない?」
怒りを抑えきれずに壁を思いっきり殴る、ものすごい音が響く。結都の気迫にモブたちがビビッて何も言えない。
モブ2「な、なんだよコイツの目……だいぶヤバくね?」
モブ3「いまにも人殺しそうな勢いじゃね……?」
モブたち退散。鈴音は少し放心状態で座り込んだまま。そんな鈴音を優しく抱きしめる結都。
鈴音(結都くんが来てくれてほんとによかった……。結都くんがいなかったらどうなってたか)
抱きしめられながら結都の服をギュッとつかむ鈴音。ほんとは怖かったけど、結都が来てくれて安心してる感じ。
結都「……アイツらに何もされてない?」
鈴音「うん……結都くんが助けてくれたから」
結都「はぁ……ほんとよかった。鈴音は可愛いから心配が絶えない」
鈴音の背中を優しくポンポン撫でる結都。
鈴音「守ってくれてありがとう」
また結都の優しくて頼りになる一面を見て、結都への気持ちがまた少し大きくなる。
結都「鈴音が俺に告白してる……?」
鈴音「感謝してるだけだよ。告白に聞こえたならそれは幻聴」
かっこいい一面を見せたかと思いきや、いつものシスコンモードに戻る結都。
どうやってここがわかったのか結都に聞く。
結都「いつもバイト終わってからすぐ連絡くるのに今日は30秒経っても来なかったから。心配で家飛び出してきた」
鈴音(30秒って……)
鈴音「秒単位で管理されてるの怖いよ」
場所はGPSでわかった。鏡見家に引っ越してきたとき、安全のためにって結都が入れてくれたアプリが実は位置情報がわかるアプリだったことが発覚。
鈴音(まさかGPSまで仕込まれてたとは……。ほんとならこんなのもうやめてって言いたいのに)
安心した顔で笑いかけてくれる結都を見たら何も言えなくなる鈴音。
結都「鈴音が無事でほんとによかった」
◯エレベーターで閉じ込められた時の回想
鈴音(結都くんの腕の中はいつもあたたかい。ちゃんとわたしを守ってくれる、大丈夫だよって全身で伝えてくれてるみたいな)


*場面転換


◯家に帰宅
珍しく両親が早く帰ってきていて久しぶりに4人で食事をすることに。
鈴音母「鈴音も結都くんも今の生活には慣れてきた?」
結都「だいぶ慣れてきました。鈴音が毎日可愛いのは慣れないですけど」
鈴音母「まぁ〜‼︎ よかったわね鈴音! こんなにかっこいいお兄ちゃんに褒めてもらえて!」
鈴音「……う、うん」
鈴音母「ふたりともとっても仲が良さそうでわたしたち安心してるのよ〜。ね、真一さん」
結都父「あぁ、そうだね。家族としてこれからも4人で仲良くやっていける未来が想像できるよ」
鈴音(家族として……そう、だよね。わたしと結都くんは兄妹で、それ以上の関係にはなれない)(結都くんの距離感とか発言とかバグッてるから勘違いしそうになるけど……わたしたちは家族で兄妹だから……きちんと線を引かなきゃ)
家族団欒な雰囲気の中で鈴音だけ少し切なそうにしてるラスト。




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