クズなキミからの不適切な溺愛

第三章 キミに惹かれていく私と美蘭の罠



(もう20時か)

私は手元の時計を確認しながら、借りていた資料を持って資料室へと向かっていた。

資料室は自社ビルの五階の突き当たりにあり、その手前には会議室が通路を挟んで三つずつあるのだが、夜は人気がない。


(金曜だから早く帰りたかったけどなぁ)

海のデートから一ヶ月経ち、吉良くんとの期間限定の交際は早いもので二ヶ月目に入った。

私が任されている広告デザインの案件も順調にブラッシュアップを重ねて、間も無く完成しそうだ。

(お腹減ったし、資料返したら帰ろう)

私は資料室に辿り着くとすぐに扉を開ける。すると先客と目が合った。


「こんなとこで会うなんて珍しいね」

「……」 

(最悪)


私は和馬の声を無視すると横を通り過ぎようとする。

和馬とはあれ以来、一切の連絡は取っていない。部署が違って本当に良かったと思っていたのに、ここにきてバッタリ出くわすなんてついてない。


「ねぇ、光莉。まだ怒ってるの?」

「怒ってない。あと名前で呼ばないで」

私は資料を戻すために踏み台を移動させる。

すると和馬も私について移動してくる。


「ついてこないで」 

「素直じゃないなぁ。素直に言えばゆるしてあげるのに。あんな吉良に言いようにされて可哀想」

「私と吉良くんのこと犬井さんに関係ないですよね。ちなみに彼は大事にしてくれてます。あなたよりずっと」

語尾を強めた私に、和馬が明らかに苛立ちをみせた。
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