オレンジ色の奇跡


「あ!間違った。『一期一会』だ」

「はぁっ?!どうやったら間違えるの!?」

「ごめん、ごめん」

「もう……。意味分かんないっ!」

 何が何だか分からないって言うのもあるけど、井上くんの新たな一面を見れておかしくなってきた。

 気が緩むように笑えば、井上くんも釣られて笑う。

「やっと、笑えたね?」

「え?ホント、井上くんって意味分かんないや」

「大丈夫。相川さんなら」

 「何が大丈夫なの?」と、聞いたあたしの声と、井上くんの「あ!」と、叫んだのは同時だった。

「ごめん!僕、帰らなくちゃっ」

「あ、うん。お花とお見舞いありがとう」

 井上くんは、慌てた様子で「それじゃ」と、言い残し病室を足早に出ていった。




< 377 / 438 >

この作品をシェア

pagetop