オレンジ色の奇跡

 晴兄についてエレベーターに乗り込み数字を押す。ウィーンと動きだした箱はしばらくして、その口を開いた。

 何度か角を曲がり目的の扉の前で止まった。 先に玄関の鍵を開けて待っててくれた晴兄について中に入る。

 「ただいま……」と晴兄。

 「朔(さく)兄ただいまっ!!」とあたし。

 玄関を抜けリビングに入ると、何かの雑誌から顔を上げあたし達を見る朔兄の姿があった。

「おかえりー。ずいぶん遅かったじゃん」

「あはは。ちょっと迷っちゃって……」

 読んでいた雑誌を片付けながらあたしに話しかけるのは、一番上の兄、相川朔真(あいかわさくま)だ。

 少しふんわりとさせた黒髪。やわらかい性格で、物事を慎重にこなしていくタイプ。

 朔兄には、西山未和(にしやまみな)さんというすごく綺麗で優しい彼女がいるみたい。

 今一緒に帰って来てキッチンに向かい冷蔵庫の中を漁(あさ)っているのは、二番目の兄、相川晴樹(あいかわはるき)。

 少しばかり明るい茶色の髪をいろんな方向にあそばせていて、朔兄とは真逆の性格で直感で行動するタイプ。

 ……彼女はいるのかな?分かんないけど、いてもおかしくないかな。

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