さくらびと。 蝶 番外編(1)
千尋さんとの出会いは、一年という歳月とともに、静かに私に爪跡を残していったが、同時に、私を少しだけ強くしてくれていたようだった。
千尋さんの死という、あまりにも大きな喪失感を抱えながらも、私は、看護師として、患者さんたちに寄り添うことの大切さを、少しずつ学んできた。
あの綺麗な青い蝶は、千尋さんが
私に「大丈夫だよ」と、そう伝えてくれているかのようだった。
彼女の温かい言葉が、私の心に響いてくる。
まるで、あの桜の木の下で、彼女が隣にいるかのような錯覚さえ覚えた。
青い蝶は、私に微笑みかけているかのようだった。
そして、ゆっくりと、私から離れていく。空高く、どこまでも高く、飛んでいく。
「ありがとう、私、頑張るね。」
私は涙を拭い、そう呟いた。あの日の記憶は、形を変えて、私の中に生き続けている。
千尋ちゃんの生きた証は、この青い蝶と共に、私の心の中に、これからも灯り続けるだろう。
それから1年後、桜の木の下で。
蕾は、また新たな出会いを果たす。
ーーーそれはほんの、小さな小さな恋の足音が、そこまで近付きつつあったーーー。
Fin.