家族になった来栖くんと。
「───…ごめんね、須和くん。ちょうどお風呂に入ってて…」
初めてついた、嘘。
あんなにも嫌いだった、嘘。
『…なんかあった?』
「…ううん。なんにも、だよ」
いやだね。
1回ついてしまうと、こんなにも平気で重ねることができてしまうんだ。
あのあと、落ちた缶ケースを片付けるより前に勢いよく腕が引かれた。
気づいたときベッドに仰向けに寝かせられていた自分と、覆いかぶさってきた影。
『つぐみちゃん……声、泣いてる』
「っ…、…すわ、くん」
『うん?』
「……すわ…くん、」
『…うん。なんも言わなくていいから、俺の声だけ聞いて』
写真なんか1つもない。
ふたりで寄ったコンビニのレシートや、数少ないデートでのチケット。
馬鹿だと思ったでしょう。
いつまでも宝物みたいに取っておいて、本当にばかで気持ち悪いよね。
そう笑った私に落ちてきたものは手のひらでも、唇でもなく、初めて見た来栖 桃弥の顔と。
サイズが大きすぎる缶ケースにすっぽり入ってしまうばかりの夢を叶えてくれた初恋の男の子の────大粒の涙だった。