氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「み、密会!?」
「はいぃ、密会、男女の秘めたる逢瀬(おうせ)ですぅ」
「誰と?」
「リーゼロッテ様とぉ」
「誰が?」
「カイ・デルプフェルト様がぁ」
「ちょっと待ってちょうだい。ベッティ、あなた、話が飛躍(ひやく)しすぎよ!?」

 リーゼロッテが慌てたように(さえぎ)ると、ベッティはわかっていますとばかりにうんうんと(うなず)いた。

「お隠しにならなくてもよろしいのですよぉ。仕える方の思いを忖度(そんたく)するのは侍女として当然のスキルですぅ。エラ様直伝(じきでん)の気遣いをいかんなく発揮(はっき)しますのでぇ、リーゼロッテ様は大船(おおぶね)に乗ったおつもりでいてくださいぃ」

(大船どころか泥船(どろぶね)なんじゃ……!?)
 リーゼロッテはあわてて頭をふるふると振った。

「あのね、ベッティ。カイ様とわたくしはそのような仲などではないし、それにそんなことを言ってはカイ様に失礼よ」
「ぇえ、そうでしょうかぁ。あの方はそのくらいじゃあビクともしないですし、むしろおもしろがるだけだと思いますけどぉ」
「……ベッティはもしかしてカイ様と面識(めんしき)があるの?」

 やけに強い決めつけにリーゼロッテは首をかしげた。

「えぇとぉう、わたしはこちらの公爵家で雇われる前に王妃様の元で働いていましたのでぇ。と言っても下っ端(したっぱ)中の下っ端でしたがぁ。王城であの方のいろんなよくないあれやこれやをたくさん山盛(やまも)り耳にしたんですぅ」

「あれやこれや……」

 リーゼロッテは無意識につぶやいた。昨日、エーミールが突然カイに暴言(ぼうげん)を吐いたことが脳裏(のうり)に浮かぶ。

(デルプフェルトの忌み子……グレーデン様はそうおっしゃっていたわね……)

 出自(しゅつじ)に関する事だろうか。カイはまるで気にした様子はなかったので、嫌がらせのうわさの(たぐい)なのかもしれない。

(どちらにしても、詮索(せんさく)するようなことではないわね、きっと……)

 親しき中にも礼儀ありだ。ちょっと気になるからと言って、何でもかんでも根掘(ねほ)葉掘(はほ)り知りたがるのは、人としてナンセンスだろう。

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