氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あれやこれやの中身をお知りになりたいですかぁ? あのですねぇ……」
「え? いいわ、別に聞きたくは……」
「まぁまぁそうおっしゃらずにぃ。あの方のよくない噂の大半はぁ、超絶(ちょうぜつ)女癖(おんなぐせ)が悪いってことですのでぇ。ぶっちゃけあの方は女の敵ですぅ。リーゼロッテ様はおやさしいからぁ、つけこまれて(もてあそ)ばれないようお気をつけくださいませねぇ」
「カイ様が女の敵?」

 王城で接したカイとその言葉がうまく結びつかない。王子とのやり取りを見る限りでは、カイはどちらかというとフェミニストという印象だ。女好きといえばそうなのかもしれないが、女の敵は言い過ぎだろう。
 昨日目にしたエマニュエルへのチャラ男ぶりは、今考えると場を(なご)ませるためのカイのパフォーマンスのようにリーゼロッテには思えた。

「ほらぁ、やっぱりお気づきになってないぃ。ぱくりと食べられちゃったらどうなさるおつもりですかぁ?」
「ベッティはわたくしを心配してくれているのね。……でもね、ベッティ、カイ様はそのような方ではないわ。ベッティが言っているのは、あくまで噂なのでしょう? だったらわたくしは自分のこの目で見たカイ様を信じたいわ」

 (しか)るでもなく静かにそう言ったリーゼロッテに、ベッティは驚いたように目を見開いた。

「わたしぃ、リーゼロッテ様がぁ、今、超・絶! 大好きになりましたぁ! お困りのことがあったら、きっとお役に立てます! 何かあったらいつでもベッティにおっしゃってくださいましねぇ!」

 一転して満面の笑みでリーゼロッテの両手を取ったベッティは、その手をぶんぶんと上下に揺さぶった。

「え、え、ぇ、ええ、ぁありがとう、そ、その気持ちだけでぅうれしいわわわ」

 かくんかくんと揺すられながらリーゼロッテがやっとの思いで返事をすると、ベッティは「はいぃ、わたしも超絶うれしいですぅ。 あ、おリボンが曲がってますよぅ」と素早い動きでリーゼロッテの乱れた髪を整えた。

「あと、大事なお知らせがございますぅ。ご朝食が済みましたら、旦那様からお話があるとのことでぇ、執務室まで来るようにとの(おお)せですぅ」
「え? それはお待たせしてはいけないわね」

 リーゼロッテは軽めの朝食を終えて、急ぎ執務室へと向かったのだった。



< 105 / 684 >

この作品をシェア

pagetop