氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「何をやっていらっしゃるんですか、あなた様は」
冷ややかな声でマテアスがふたりの間を割るようにして、アデライーデの前に紅茶をサーブしてくる。
「ちょっと邪魔よ、マテアス。未来の妹と親睦を深めて何が悪いのよ?」
「リーゼロッテ様にはもっと親睦を深めるべき相手がいらっしゃいますので」
笑顔を保ったまま、マテアスはふたりの間から退こうとしない。それを見たアデライーデはくいと片眉を上げ、公爵令嬢らしからぬ勢いでごくごくと紅茶を飲みほした。
「おかわり」
一瞬ひきつった顔をしたマテアスに、アデライーデはにっこりと笑顔を向ける。
「わたくし、マテアスのおいしい紅茶が、もう一杯飲みたいの。わたくしのために、心を込めて淹れてくれるわよね?」
今度は公爵令嬢にふさわしい楚々とした所作と言葉遣いでマテアスに畳みかけた。苦虫をかみつぶしたような表情をした後、マテアスはアデライーデに笑顔を返し丁寧に腰を折った。
「もちろんでございます、アデライーデお嬢様」
マテアスがその場から離れると、「もっとリーゼロッテを補給させて!」と、すかさずアデライーデは椅子をずらしてリーゼロッテににじり寄る。
公爵令嬢の仮面は一瞬で崩れ去った。その腕にリーゼロッテを囲い込むと、その頭にすりすりと頬ずりをする。
「おい」
「何よ、いいでしょ別に。ヴァルトは普段から触りたい放題なんだから、たまにしか会えないわたしにはこれくらいする権利があるわ」
冷ややかな声でマテアスがふたりの間を割るようにして、アデライーデの前に紅茶をサーブしてくる。
「ちょっと邪魔よ、マテアス。未来の妹と親睦を深めて何が悪いのよ?」
「リーゼロッテ様にはもっと親睦を深めるべき相手がいらっしゃいますので」
笑顔を保ったまま、マテアスはふたりの間から退こうとしない。それを見たアデライーデはくいと片眉を上げ、公爵令嬢らしからぬ勢いでごくごくと紅茶を飲みほした。
「おかわり」
一瞬ひきつった顔をしたマテアスに、アデライーデはにっこりと笑顔を向ける。
「わたくし、マテアスのおいしい紅茶が、もう一杯飲みたいの。わたくしのために、心を込めて淹れてくれるわよね?」
今度は公爵令嬢にふさわしい楚々とした所作と言葉遣いでマテアスに畳みかけた。苦虫をかみつぶしたような表情をした後、マテアスはアデライーデに笑顔を返し丁寧に腰を折った。
「もちろんでございます、アデライーデお嬢様」
マテアスがその場から離れると、「もっとリーゼロッテを補給させて!」と、すかさずアデライーデは椅子をずらしてリーゼロッテににじり寄る。
公爵令嬢の仮面は一瞬で崩れ去った。その腕にリーゼロッテを囲い込むと、その頭にすりすりと頬ずりをする。
「おい」
「何よ、いいでしょ別に。ヴァルトは普段から触りたい放題なんだから、たまにしか会えないわたしにはこれくらいする権利があるわ」