氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
(ひと針ひと針思いを()めた刺繍のハンカチ……。字面(じづら)だけだと、なんだが怨念(おんねん)がそこにおんねん的な感じがするわ……)

 針で指を刺してしまった時は、布に血がつかないよう細心の注意を払っていたので、まだましだろうか。怨念が染みついた上、血塗(ちぬ)られたハンカチとあっては、オカルト度が上昇しまくりだ。

「……でも、本当によろこんでいただけるかしら」

 かえって迷惑になるのではと、急にリーゼロッテが意気(いき)消沈(しょうちん)しだしたので、エラが驚いたようにその手を取った。

「もちろんでございます! 公爵様は以前に贈られたハンカチも大事に使ってくださっていましたし、お嬢様が公爵様をお思いなって(ほど)された刺繍をおよろこびにならないはずはございません!」

 その言葉にリーゼロッテははっとした。
(そうよ! 前のハンカチを返してもらうために新しく作っていたんだったわ)

 以前贈った刺繍のハンカチは、ジークフリートのために作ったものだった。それがなぜだかジークヴァルトの手に渡り、大事に使われ続けていると思うと、リーゼロッテの良心がちくちくと痛んでしまう。

(前のハンカチを返してもらうには、手渡ししないとダメよね、きっと)
 手紙で伝えるのもどうだろうと思うし、それに一体何と言ってハンカチを取り戻そう。

(以前のハンカチは出来栄えが悪くて恥ずかしいから、これと交換で返してほしいと言うしかないかしら……)

 手紙でお願いすると、問題ないとの一言で片づけられかねないので、ここはやはり直接交渉するしかないだろう。

「でもお渡しするのは、白の夜会以降になってしまうわね」
「そうですね。夜会でお渡しするわけにはいきませんからね。……お嬢様はデビューがお済みなったら、また公爵家へ行かれるご予定ですか?」
「ええ、きっとそうなると思うわ」

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