氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「王都にはどんなお店があるのかしら?」
「お嬢様をお連れするのだとしたら、きっと貴族街(きぞくがい)でしょうね。貴族街には宝飾(ほうしょく)(てん)からドレスの仕立て屋、お嬢様のお好きな可愛らしい雑貨を扱う店などもございますよ。エデラー家も末席(まっせき)ながら店を(かま)えていますし」
「そうなのね! お茶を飲むことができる店もあるかしら?」
「ええ、おいしい紅茶とケーキがいただける店もございますね。あと、占いの(やかた)なども最近は話題になっているようです。なんでも店が開いている時間が不定期で、なかなか占ってもらえないのだとか」
「まあ! (まぼろし)の占いね!」
「とても美しい占い師がみてくれると、王城でもそんな話をよく聞きました。その占い師は、貴族街の聖女と呼ばれているそうですよ」

 この国には星占いのようなものはないので、リーゼロッテは瞳を輝かせた。一生に一度くらいは、本格的な占い師に占ってもらいたいものである。

(でも、ヴァルト様は相変わらず忙しそうだし、本当に連れて行ってもらえるか微妙だけれど……)

 期待が大きいと駄目だった時の落胆(らくたん)も大きくなる。過度(かど)の期待は禁物(きんもつ)だとリーゼロッテは自分に言い聞かせた。

「それにしても、どうしてエラがエーミール様をご案内することに?」
「はい、少々困っていたところを助けていただきまして、そのお礼にと」
「え? 何かあったの?」

 心配そうな顔になったリーゼロッテに、エラは慌てたように言った。

「いえ、たいしたことでは! 廊下を歩いていたら目にゴミが入って、涙が止まらなくなったのです。そこを通りがかったエーミール様がハンカチを貸してくださいまして」
「まあ、あのエーミール様が」

 心なしかエラの頬が赤い。まあ、あのイケメン貴公子にハンカチを差し出されたら、ちょっとくらいトキメいてしまうのは仕方のないことだろう。

(口さえ開かなければ、エーミール様はすごくカッコいいのに……。なんだか残念だわ)

 エーミールのいけ好かなさは「ただしイケメンに限る」をはるかに凌駕(りょうが)している。エラが嫌な目にあったりしないか、今から心配だ。

「エーミール様と街へ行ったとき、何か困ったことがあったらすぐに相談してちょうだいね」
「はい、ありがとうございます、お嬢様」

 リーゼロッテの危惧(きぐ)をよそに、エラはしあわせそうに頷いた。






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