寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
奥歯を噛みしめ涙が溢れないようにと、リーゼロッテは小さくしゃくりあげた。顔を上げた先ジークヴァルトの肩越しに、鳥籠のようなガゼボが歩みと共に小さく遠ざかっていく。
「もう少しだ。すぐに着く」
泣いているのは寒さのせいだとでも思ったのか、そんなことを言ってくる。さらに歩調を速めたジークヴァルトの首筋に顔をうずめ、リーゼロッテは何度も何度も首を振った。
約束の時間を過ぎても一向に訪れない自分を探しに出て、見つけたと思ったら訳も分からず泣かれている。ジークヴァルトにしてみれば、はた迷惑なことこの上ないだろう。
(もう、本当に、今日で終わりにしよう)
ジークヴァルトの前で泣くのも。ジークヴァルトに甘えるのも。その厚意をいいことに、自分は好き放題ばかりしてきた。
(ヴァルト様がやさしいのは、わたしが託宣の相手だから)
初めから分かっていたはずなのに、どうしてこんな勘違いをしていたのか。義務だとしても、自分の事を好きでいてくれている。勝手にそう思い込んでいた自分に、いい加減嫌気がさしてくる。
「……ごめんなさい」
「いい。お前が無事ならそれでいい」
耳元で小さく漏れ出た言葉に、ジークヴァルトはそっけなく返してきた。名を呼ぶのもきっとこれが最後だ。リーゼロッテはありったけの心で、その名を呼んだ。
「ヴァルト様」
覗き込むように小さく笑顔を作る。
「こんなわたくしのために、ありがとうございます……」
今まで、本当に。これからはちゃんと自分の足で立たなくてはならない。いつか来る別れを前に、寄りかかり切りでいる訳にはいかないのだから。
この温もりを忘れないようにと、回した手にぎゅっと力を入れた。リーゼロッテは部屋につくまで、おとなしくジークヴァルトの腕に抱かれていた。
「もう少しだ。すぐに着く」
泣いているのは寒さのせいだとでも思ったのか、そんなことを言ってくる。さらに歩調を速めたジークヴァルトの首筋に顔をうずめ、リーゼロッテは何度も何度も首を振った。
約束の時間を過ぎても一向に訪れない自分を探しに出て、見つけたと思ったら訳も分からず泣かれている。ジークヴァルトにしてみれば、はた迷惑なことこの上ないだろう。
(もう、本当に、今日で終わりにしよう)
ジークヴァルトの前で泣くのも。ジークヴァルトに甘えるのも。その厚意をいいことに、自分は好き放題ばかりしてきた。
(ヴァルト様がやさしいのは、わたしが託宣の相手だから)
初めから分かっていたはずなのに、どうしてこんな勘違いをしていたのか。義務だとしても、自分の事を好きでいてくれている。勝手にそう思い込んでいた自分に、いい加減嫌気がさしてくる。
「……ごめんなさい」
「いい。お前が無事ならそれでいい」
耳元で小さく漏れ出た言葉に、ジークヴァルトはそっけなく返してきた。名を呼ぶのもきっとこれが最後だ。リーゼロッテはありったけの心で、その名を呼んだ。
「ヴァルト様」
覗き込むように小さく笑顔を作る。
「こんなわたくしのために、ありがとうございます……」
今まで、本当に。これからはちゃんと自分の足で立たなくてはならない。いつか来る別れを前に、寄りかかり切りでいる訳にはいかないのだから。
この温もりを忘れないようにと、回した手にぎゅっと力を入れた。リーゼロッテは部屋につくまで、おとなしくジークヴァルトの腕に抱かれていた。