寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
こずるい考えが頭に浮かんでは消えていく。しゃくりあげた視線の先に、誰か人影が浮かび上がった。薄くけぶる新緑の中、その姿が次第にはっきりしてくる。
青ざめて見える顔は、この天気のせいだけではないだろう。自分の元へ一目散に駆け寄るジークヴァルトを、気持ちの整理がつかないまま、涙をこらえて迎え入れた。雨の中ずっと探し回っていたのか、その髪の先から雫がいくつも落ちていく。
「怪我はないか?」
小さく頷くと、ジークヴァルトは目の前で片膝をついた。
「なぜここにいる? 何があった?」
誤魔化しきれない涙の痕に、長い指が沿わされていく。くすんだ雨の中、ジークヴァルトの瞳の青がいっそう綺麗だ。そんなことを思いながら、リーゼロッテは伏し目がちに視線をそらした。
「少し外の空気が吸いたいと思って庭に出たら、急に雨に降られてしまって……ご迷惑をおかけしました」
「そういう時はオレに言え。言えばちゃんと連れて行く」
どうして今まで気づかなかったのだろう。
(わたし、このひとがたまらなく好きだ――)
ぎゅうっと胸が締め付けられる。細かく唇が震え、リーゼロッテの瞳から再び涙が溢れだした。
「寒いのか?」
脱いだ上着をリーゼロッテの肩に掛けると、ジークヴァルトはそのまま抱き上げようとした。両手で胸を押し、小さく首を振る。
「わたくし自分で戻れます」
「いや駄目だ、却下だ。少し濡れるが我慢しろ」
そう言ってジークヴァルトは強引にリーゼロッテを子供抱きに抱え上げた。リーゼロッテが濡れないようにか、いつもよりきつく抱きしめられる。小雨の中、大股で進んでいくジークヴァルトにしがみつきながら、リーゼロッテは必死に嗚咽を堪えることしかできなかった。
(ヴァルト様が好き……でも、ヴァルト様には今も思う初恋の人がいる)
青ざめて見える顔は、この天気のせいだけではないだろう。自分の元へ一目散に駆け寄るジークヴァルトを、気持ちの整理がつかないまま、涙をこらえて迎え入れた。雨の中ずっと探し回っていたのか、その髪の先から雫がいくつも落ちていく。
「怪我はないか?」
小さく頷くと、ジークヴァルトは目の前で片膝をついた。
「なぜここにいる? 何があった?」
誤魔化しきれない涙の痕に、長い指が沿わされていく。くすんだ雨の中、ジークヴァルトの瞳の青がいっそう綺麗だ。そんなことを思いながら、リーゼロッテは伏し目がちに視線をそらした。
「少し外の空気が吸いたいと思って庭に出たら、急に雨に降られてしまって……ご迷惑をおかけしました」
「そういう時はオレに言え。言えばちゃんと連れて行く」
どうして今まで気づかなかったのだろう。
(わたし、このひとがたまらなく好きだ――)
ぎゅうっと胸が締め付けられる。細かく唇が震え、リーゼロッテの瞳から再び涙が溢れだした。
「寒いのか?」
脱いだ上着をリーゼロッテの肩に掛けると、ジークヴァルトはそのまま抱き上げようとした。両手で胸を押し、小さく首を振る。
「わたくし自分で戻れます」
「いや駄目だ、却下だ。少し濡れるが我慢しろ」
そう言ってジークヴァルトは強引にリーゼロッテを子供抱きに抱え上げた。リーゼロッテが濡れないようにか、いつもよりきつく抱きしめられる。小雨の中、大股で進んでいくジークヴァルトにしがみつきながら、リーゼロッテは必死に嗚咽を堪えることしかできなかった。
(ヴァルト様が好き……でも、ヴァルト様には今も思う初恋の人がいる)