寡黙な公爵と託宣の涙 -龍の託宣3-
◇
リーゼロッテと連れ立って歩きながら、エラはその横顔を少し遅れた位置から見つめていた。数日前に雨に降られて、リーゼロッテは微熱を出していた。どうして庭へ行ったのか、公爵と共に行ったのか、問いかけても曖昧な返事しか返ってこない。
今朝ようやく熱が下がり、王城から戻ってくる公爵を出迎えにいくところだ。リーゼロッテはずっと公爵の怪我の具合を心配していた。出仕が再開されて、負担が増えるのではと憂いているのかもしれない。
元気がないのはそのせいかと、とりあえずそれで納得した。悩み事があっても自分の中で整理がつくまで、そのことをなかなか口にしてくれない。今は問い詰める時期ではない。そう思ってエラは、リーゼロッテが自ら話してくれるのを待っていた。
エントランスに着き、家令のエッカルトと共に中央に並び立つ。周囲を囲むように大勢の使用人たちも控えていた。こんな時、リーゼロッテはエッカルトに笑顔で話しかけるのだが、今日は伏し目がちに表情なく黙りこくっている。
「リーゼロッテ様……お加減はまだよろしくないのですかな?」
「いいえ、もう大丈夫よ。ありがとう、エッカルト」
気づかわしげに声をかけてきたエッカルトに、リーゼロッテはにこっと笑みを返した。しかしその視線が床の上に外されると、ふっと先ほどの無表情に戻ってしまう。
エッカルトが何かを言おうとしたタイミングで、公爵が扉から現れた。リーゼロッテの姿を認め、真っすぐにこちらへと向かって来る。
「具合はもういいのか?」
「はい、ご心配をおかけしました」
淑女の礼をとり、リーゼロッテはこわばった笑みをジークヴァルトへと向けた。そしてすぐに視線をそらす。そのまま俯いてしまったリーゼロッテに、もう一度公爵が問うた。
「本当に具合はよくなったのか?」
「はい、今朝熱は下がりました。公爵様も久しぶりの出仕でお疲れでございましょう。わたくしのことなどお気になさらず、どうぞご自愛なさってくださいませ」
他人行儀にもう一度礼をとると、リーゼロッテは一歩下がって公爵から距離を取った。
リーゼロッテと連れ立って歩きながら、エラはその横顔を少し遅れた位置から見つめていた。数日前に雨に降られて、リーゼロッテは微熱を出していた。どうして庭へ行ったのか、公爵と共に行ったのか、問いかけても曖昧な返事しか返ってこない。
今朝ようやく熱が下がり、王城から戻ってくる公爵を出迎えにいくところだ。リーゼロッテはずっと公爵の怪我の具合を心配していた。出仕が再開されて、負担が増えるのではと憂いているのかもしれない。
元気がないのはそのせいかと、とりあえずそれで納得した。悩み事があっても自分の中で整理がつくまで、そのことをなかなか口にしてくれない。今は問い詰める時期ではない。そう思ってエラは、リーゼロッテが自ら話してくれるのを待っていた。
エントランスに着き、家令のエッカルトと共に中央に並び立つ。周囲を囲むように大勢の使用人たちも控えていた。こんな時、リーゼロッテはエッカルトに笑顔で話しかけるのだが、今日は伏し目がちに表情なく黙りこくっている。
「リーゼロッテ様……お加減はまだよろしくないのですかな?」
「いいえ、もう大丈夫よ。ありがとう、エッカルト」
気づかわしげに声をかけてきたエッカルトに、リーゼロッテはにこっと笑みを返した。しかしその視線が床の上に外されると、ふっと先ほどの無表情に戻ってしまう。
エッカルトが何かを言おうとしたタイミングで、公爵が扉から現れた。リーゼロッテの姿を認め、真っすぐにこちらへと向かって来る。
「具合はもういいのか?」
「はい、ご心配をおかけしました」
淑女の礼をとり、リーゼロッテはこわばった笑みをジークヴァルトへと向けた。そしてすぐに視線をそらす。そのまま俯いてしまったリーゼロッテに、もう一度公爵が問うた。
「本当に具合はよくなったのか?」
「はい、今朝熱は下がりました。公爵様も久しぶりの出仕でお疲れでございましょう。わたくしのことなどお気になさらず、どうぞご自愛なさってくださいませ」
他人行儀にもう一度礼をとると、リーゼロッテは一歩下がって公爵から距離を取った。