アパレル店員のお兄さんを【推し】にしてもいいですか?
特別な時間
一優の家で映画を観る2人は、さゆかを後ろからハグするようにソファの前に座っている。
(近い近い。え、これ一優さん画面見えてる?この状況がやばすぎて、全く内容が入ってこないんだけど)
緊張で硬直するさゆか。
「なんかさゆか良い匂いする」
さゆかの顔を覗き込む一優。
「ヘアオイル新しくしたので、それかも?」
「めっちゃ好みの匂い」
そう言いながらぎゅっと抱きしめられ、顔を赤くして照れるさゆか。
「あれ、照れてる?」
「からかわないでください」
「ごめんごめん。俺の彼女はかわいいなぁー」
すりすりしながらくっついてくる。
(なんだか文化祭以来、推しの彼氏が甘々です)
映画を見終わるとソファに座り、向き合うようにさゆかを自分の膝に座らせた。
「やだ!重いから下ろしてください」
「ぜーんぜん重くないよ」
(そんな甘い笑顔で言われてもー)
「修学旅行って今月だっけ?」
「はい。もうすぐ球技大会があって、その後すぐに修学旅行なので、2年生はバタバタです。そして、帰ってきたら来月の期末に向けてテスト勉強の日々です…」
「学生ならではの忙しさだね。じゃあ、テスト明けまで会えなさそうかぁ」
「はい…」
しょんぼりするさゆかを見て、腰に回した手をグイッと自分の体に引き寄せた一優。
「来月さ、テスト期間が終わったら早めのクリスマスデートしようか!俺も来月下旬から年末年始過ぎるまで忙しくて、ゆっくり会えないと思うし」
「やった!テスト終わりのご褒美ですね」
(幸せ過ぎるぅー。元々素敵だけど、彼氏になって何百倍も魅力が増している)
球技大会当日。体育館とグラウンドは、肌寒さを忘れるほど熱気に包まれていた。さゆかと麻由はバスケ、友美はサッカーに出場する。
3人は、体育館で一緒に女子バレーの応援をしていた。
「そういえば、菅もバレーに出るんだっけ?」
友美がさゆかたちに聞く。
「そうだよ。バスケ部はバスケ参加不可だし、サッカーも去年活躍して優勝したから他のクラスから出るなって言われて。結局、1番向いてなさそうなバレーに選ばれてた」
「時間被らなかったら応援に行こうかな。もちろん、5組とあたれば応援しないけど」
さゆかと麻由がバスケの試合に出ている。試合の合間に菅たちが応援に駆けつけた。
僅差で負けているまま、終了時間が迫っていた。麻由がボールを手にスリーポイント位置に立ち、チラッと応援席の菅を見た。
1週間前、麻由は公園でバスケの練習をしていた。
「水沢?」
「え?」
たまたま通りがかった菅が近づいてきた。
「もしかして、球技大会の練習?」
「あ、うん。シュートが全然決まんなくて。せっかくなら勝ちたいし」
「1回シュートしてみて」
と菅が指示した。
「え、あ…うん」
戸惑いながらシュートをした麻由だが、ボールはゴールに入らなかった。
「おぉ、フォームは悪くないじゃん!多分、力の入れ方が…」
説明しながらボールを手にする菅。
「力の入れ方かぁ…アドバイスありがとう。ごめん、引き止めちゃって」
お礼を伝えたものの、帰る気配のない菅。腕まくりをしながら「暇だし、練習付き合わせて!」と屈託のない笑顔を見せた。頬を赤くする麻由。
「水沢!いけー!」
菅の声援が響く。麻由は一呼吸して、シュートした。
ポスッ
見事スリーポイントシュートを決めた。
無事試合に勝った2組。
「水沢ーーっ!やったなぁ!!」
菅がはしゃぎながら、麻由にハイタッチしようと駆け寄ってきた。
パチンッ
「イェーイ!さすが俺の弟子!」
少し照れる麻由。
「弟子?」
「しらっちには内緒ー。あ、俺たち決勝進んだから後で応援よろしくなー」
次の試合で敗戦したさゆかたちは、男子バレーの応援に行った。男子バレー決勝戦は、2組と5組の対戦。
「まさか、決勝であたるとは…。悪いけど、優勝は5組がもらうから!」
「いやいや、優勝は2組ですけど?」
「こっちには矢田がいるから、声援も優勝もいただきじゃい!」
試合が始まった。菅は相手のサーブやスパイクをなんなくと上げ、自ら高くジャンプしスパイクを勢いよく決める。
「なんなんだよ菅はー!アイツに出来ねぇスポーツはないのかよ!」
その活躍は、他のクラスからブーイングが起こるほどだった。
(菅、相変わらずスポーツおばけだな。…矢田くんもスパイクやブロックたくさん決めてる。あの2人バレー部でもいけるコンビだな)
試合はそれぞれ1セットずつ取り、最終セットを迎えた。白熱する中
「危ないっ!」
「きゃっ…」
レシーブミスで横に飛んだボールが、勢いよくさゆかの左肩に当たった。
「さゆか、大丈夫!?」
「う、うん」
(痛い…けど試合最後まで観たいし)
試合が再開され、菅がコート内から肩をさする姿を気にかけていた。
ピーピピーッ。ゲームセットのホイッスルが鳴り響く。接戦に勝ったのは2組だった。
「やったーー!!優勝だー!!」
さゆかと麻由はハイタッチをした。
(うっ、肩痛っ)
喜びも束の間、
タッタッタッ
菅が小走りでやってきた。
「しらっち、いくぞ」
「え…?」
さゆかの右手首を掴み、体育館を出て行く。その様子を複雑な表情で見る麻由。
着いたのは保健室だった。
「あれ、先生いねぇな。外でケガ人出たのかな」
「…。」
とりあえず椅子に座るさゆか。
「肩、痛いんだろ?」
手慣れた様子で何か用意しながら菅が聞く。
「あぁ、ちょっとだけね」
「ちょっとって。あの強さのボール当たったら痛いに決まってんじゃん。何で早く保健室行かねんだよー」
「だって…勝つとこ見たかったんだもん」
「わがままか。ちゃんと冷やさねぇと腫れがひどくなるだろ。ほら、これで冷やして」
「ありがとう」
渡された氷嚢で肩を冷やした。
「慣れてるんだね」
「運動部は、ちょっとしたケガが付きものだからな。俺はあんまケガしないけど、他の部員の手当てしたりするからさ」
さゆかたちを探していた麻由は、保健室にいることに気づき入ろうとしたが、声が聞こえドア付近で立ち止まった。
「勝つとこ見たいって…負けると思わなかったのかよ」
「だって…菅がいたら最強じゃん?」
少し悪そうな笑顔を見せた。
「ふっ、まぁな」
2人の雰囲気にいたたまれなくなった麻由は、その場を静かに立ち去った。
(近い近い。え、これ一優さん画面見えてる?この状況がやばすぎて、全く内容が入ってこないんだけど)
緊張で硬直するさゆか。
「なんかさゆか良い匂いする」
さゆかの顔を覗き込む一優。
「ヘアオイル新しくしたので、それかも?」
「めっちゃ好みの匂い」
そう言いながらぎゅっと抱きしめられ、顔を赤くして照れるさゆか。
「あれ、照れてる?」
「からかわないでください」
「ごめんごめん。俺の彼女はかわいいなぁー」
すりすりしながらくっついてくる。
(なんだか文化祭以来、推しの彼氏が甘々です)
映画を見終わるとソファに座り、向き合うようにさゆかを自分の膝に座らせた。
「やだ!重いから下ろしてください」
「ぜーんぜん重くないよ」
(そんな甘い笑顔で言われてもー)
「修学旅行って今月だっけ?」
「はい。もうすぐ球技大会があって、その後すぐに修学旅行なので、2年生はバタバタです。そして、帰ってきたら来月の期末に向けてテスト勉強の日々です…」
「学生ならではの忙しさだね。じゃあ、テスト明けまで会えなさそうかぁ」
「はい…」
しょんぼりするさゆかを見て、腰に回した手をグイッと自分の体に引き寄せた一優。
「来月さ、テスト期間が終わったら早めのクリスマスデートしようか!俺も来月下旬から年末年始過ぎるまで忙しくて、ゆっくり会えないと思うし」
「やった!テスト終わりのご褒美ですね」
(幸せ過ぎるぅー。元々素敵だけど、彼氏になって何百倍も魅力が増している)
球技大会当日。体育館とグラウンドは、肌寒さを忘れるほど熱気に包まれていた。さゆかと麻由はバスケ、友美はサッカーに出場する。
3人は、体育館で一緒に女子バレーの応援をしていた。
「そういえば、菅もバレーに出るんだっけ?」
友美がさゆかたちに聞く。
「そうだよ。バスケ部はバスケ参加不可だし、サッカーも去年活躍して優勝したから他のクラスから出るなって言われて。結局、1番向いてなさそうなバレーに選ばれてた」
「時間被らなかったら応援に行こうかな。もちろん、5組とあたれば応援しないけど」
さゆかと麻由がバスケの試合に出ている。試合の合間に菅たちが応援に駆けつけた。
僅差で負けているまま、終了時間が迫っていた。麻由がボールを手にスリーポイント位置に立ち、チラッと応援席の菅を見た。
1週間前、麻由は公園でバスケの練習をしていた。
「水沢?」
「え?」
たまたま通りがかった菅が近づいてきた。
「もしかして、球技大会の練習?」
「あ、うん。シュートが全然決まんなくて。せっかくなら勝ちたいし」
「1回シュートしてみて」
と菅が指示した。
「え、あ…うん」
戸惑いながらシュートをした麻由だが、ボールはゴールに入らなかった。
「おぉ、フォームは悪くないじゃん!多分、力の入れ方が…」
説明しながらボールを手にする菅。
「力の入れ方かぁ…アドバイスありがとう。ごめん、引き止めちゃって」
お礼を伝えたものの、帰る気配のない菅。腕まくりをしながら「暇だし、練習付き合わせて!」と屈託のない笑顔を見せた。頬を赤くする麻由。
「水沢!いけー!」
菅の声援が響く。麻由は一呼吸して、シュートした。
ポスッ
見事スリーポイントシュートを決めた。
無事試合に勝った2組。
「水沢ーーっ!やったなぁ!!」
菅がはしゃぎながら、麻由にハイタッチしようと駆け寄ってきた。
パチンッ
「イェーイ!さすが俺の弟子!」
少し照れる麻由。
「弟子?」
「しらっちには内緒ー。あ、俺たち決勝進んだから後で応援よろしくなー」
次の試合で敗戦したさゆかたちは、男子バレーの応援に行った。男子バレー決勝戦は、2組と5組の対戦。
「まさか、決勝であたるとは…。悪いけど、優勝は5組がもらうから!」
「いやいや、優勝は2組ですけど?」
「こっちには矢田がいるから、声援も優勝もいただきじゃい!」
試合が始まった。菅は相手のサーブやスパイクをなんなくと上げ、自ら高くジャンプしスパイクを勢いよく決める。
「なんなんだよ菅はー!アイツに出来ねぇスポーツはないのかよ!」
その活躍は、他のクラスからブーイングが起こるほどだった。
(菅、相変わらずスポーツおばけだな。…矢田くんもスパイクやブロックたくさん決めてる。あの2人バレー部でもいけるコンビだな)
試合はそれぞれ1セットずつ取り、最終セットを迎えた。白熱する中
「危ないっ!」
「きゃっ…」
レシーブミスで横に飛んだボールが、勢いよくさゆかの左肩に当たった。
「さゆか、大丈夫!?」
「う、うん」
(痛い…けど試合最後まで観たいし)
試合が再開され、菅がコート内から肩をさする姿を気にかけていた。
ピーピピーッ。ゲームセットのホイッスルが鳴り響く。接戦に勝ったのは2組だった。
「やったーー!!優勝だー!!」
さゆかと麻由はハイタッチをした。
(うっ、肩痛っ)
喜びも束の間、
タッタッタッ
菅が小走りでやってきた。
「しらっち、いくぞ」
「え…?」
さゆかの右手首を掴み、体育館を出て行く。その様子を複雑な表情で見る麻由。
着いたのは保健室だった。
「あれ、先生いねぇな。外でケガ人出たのかな」
「…。」
とりあえず椅子に座るさゆか。
「肩、痛いんだろ?」
手慣れた様子で何か用意しながら菅が聞く。
「あぁ、ちょっとだけね」
「ちょっとって。あの強さのボール当たったら痛いに決まってんじゃん。何で早く保健室行かねんだよー」
「だって…勝つとこ見たかったんだもん」
「わがままか。ちゃんと冷やさねぇと腫れがひどくなるだろ。ほら、これで冷やして」
「ありがとう」
渡された氷嚢で肩を冷やした。
「慣れてるんだね」
「運動部は、ちょっとしたケガが付きものだからな。俺はあんまケガしないけど、他の部員の手当てしたりするからさ」
さゆかたちを探していた麻由は、保健室にいることに気づき入ろうとしたが、声が聞こえドア付近で立ち止まった。
「勝つとこ見たいって…負けると思わなかったのかよ」
「だって…菅がいたら最強じゃん?」
少し悪そうな笑顔を見せた。
「ふっ、まぁな」
2人の雰囲気にいたたまれなくなった麻由は、その場を静かに立ち去った。