アパレル店員のお兄さんを【推し】にしてもいいですか?
熱を帯びる
修学旅行から帰ってきたさゆかは、お土産を渡すために一優のお店に向かっていた。
(お店行くの久々だなぁ。あ、駒井さんだ)
「こんにちはー」
「あっ!いらっしゃいませ!店頭で会うの初めてですね」
「そうですね。あの、滝さんいますか?」
「今、店長接客中で。今日土曜なんで、おそらく指名続きかと」
奥で接客する一優をチラッと確認した。
(そうだった、私の彼は店頭ではみんなの推しなんだよね。仕方ない…)
「あの、申し訳ないんですけど、これ渡しておいてもらってもいいですか?」
「分かりました」
駒井にお土産を預け、お店を後にした。
帰っていると一優から連絡がきた。
『さっき来てくれてたよね?
接客続きで対応できなくてごめん
お土産ありがとう』
(やっぱ気づいてたんだ)
『こちらこそ忙しい時にすみません
お仕事頑張ってください』
(会いたいけど、私もテスト勉強頑張らないとね)
12月。約束のデート前日の夜、マスク姿で体温計を母に渡すさゆか。体温計には38.1と表示されている。
「風邪ね」
「ゔぅー」
「明日、仕事休もうか?」
「ゔゔん、1人で大丈夫」
「まぁ薬飲んで、1日ゆっくり寝とけば治るかな」
ベッドに入り、朦朧としながらスマホを持つ。
(さいあくだ…せっかくのクリスマスデート前日に体調崩すなんて…。この日のために会えなくても我慢して、テストも頑張ったのにー。はぁ、断りの連絡いれないと。念願の夜景デートがぁ…)
『お疲れ様です。
実は、体調を崩してしまって…。
本当に申し訳ないのですが、明日のデートは無しでもいいですか?』
『え!?大丈夫!?
デートのことは気にしなくていいから
治すこと優先してゆっくり休んで。
お大事に』
一優の返信を確認し、眠りについた。
次の日の朝。寝ているさゆかに母が声をかける。
「仕事いってくるからね!ご飯と薬ここに置いとくから。なんかあったら連絡してね。じゃ、行ってきます」
「んー」
重い身体を起こしお粥を食べ、薬を飲んだ。スマホを確認すると一優から連絡が入っていた。
『おはよう。体調どう?
昨日聞き忘れたんだけど、今日お母さんいる?』
『おはようございます。だいぶ楽になりました。母は仕事に行きました。』
返信を終え、布団に入りゆっくりと目を閉じた。
2時間後。目が覚め、ぼーっと天井を見つめる。
(ゼリー食べたいなぁ。みかんの気分。買いに行く元気…ないけど食べたい。行くにしても外は寒いよね)
外の温度を確認しようと、窓を開けた。
(寒っ。ゼリーは我慢するか)
窓を閉めようとした時
「さゆかっ!」
一優の声がした。
「え…」
周りを見渡すと荷物を持った一優がいた。
「えええ、何してるんですか!?」
「看病する人いないみたいだから、心配で来ちゃった」
「え、あ、風邪うつったら困るし、それに髪とか顔とかボロボロで」
「何言ってるから聞こえないから、玄関行くねー!」
(さっきまで聞こえてたじゃん!もぉー、変なとこ強引なんだからー)
急いで玄関に向かう。
ガチャ。
「どうぞ…」
「お邪魔します」
靴を揃え、中に入る一優。
「すみません、こんな姿で」
「ナチュラルなさゆかも可愛いから問題なし」
部屋に入り、買ってきた差し入れを渡す一優。
「突然来てごめんね。はい、これ」
「え、ゼリー!!嬉しい!すごく食べたい気分だったんです。しかも、みかんと桃のダブルだぁ」
「適当に食べやすいもの選んだけど、以心伝心したみたいで良かった。一緒に食べよ」
ゼリーを食べ終え、満足げなさゆか。
「寝てなくて大丈夫?熱は?」
「さっきまで寝てたんで大丈夫です。ゼリーのおかげもあって、熱はだいぶ下がりました」
一優がさゆかのおでこに手を当てる。
(うわーー、こんなことされたら余計熱上がるんだけど)
「え、熱いじゃん!ほら、ちゃんと休む」
強引に布団に寝させられた。
「お母さん、何時に帰ってくるの?」
「20時位だと」
「じゃあ、19時前には帰るね。時間潰しに雑誌とか持ってきたから、気にせず寝てて」
「ありがとうございます」
身体を横に向けた。
「一優さん…」
「んー?」
「手、繋いでてもいいですか?」
「もちろん」
優しく微笑み、手を握る。
いつの間にか寝たさゆかの横で、空いた片手で雑誌を読む一優。
(懐かしい夢を見た。まだ幼かった頃、父が看病してくれたことがある。
「うぅ、しんどいよぉ…」
「さゆか大丈夫だよ。お父さんがそばにいるから」
「うん」
大きな手で、不安になる私の手を優しく握ってくれた。お父さん…会いたいな)
ゆっくりと目を開けるさゆか。
(寝ちゃってた)
握られたままの手が視線に入った。
(ずっと繋いでてくれたんだ)
「あ、起きた?調子どう?」
「すごく楽になりました」
起き上がるさゆか。
「なら良かった。俺、もうそろそろ帰るから、その前に渡したいものがあって」
鞄から何か取り出す。
「はい」
ラッピングされたプレゼントを渡す。
「え、今年はプレゼント無しって…」
「デートだめになって、落ち込んでるかなと思って。クリスマスプレゼントじゃなくて、元気出してのプレゼントだから気にしないで」
(どこまで優しいのぉ)
「ありがとうございます」
玄関で一優を見送るさゆか。
「本当にありがとうございました」
「全然。俺が会いたかっただけだから。じゃあ、また連絡するね」
ドアに向かい帰ろうとする一優。
「あ」
振り返り、
ちゅっ
おでこにキスをした。
「大好き。…じゃ、お大事に」
ドアが閉まり、おでこに手をあてるさゆか。
(不意打ちは反則ー)
(お店行くの久々だなぁ。あ、駒井さんだ)
「こんにちはー」
「あっ!いらっしゃいませ!店頭で会うの初めてですね」
「そうですね。あの、滝さんいますか?」
「今、店長接客中で。今日土曜なんで、おそらく指名続きかと」
奥で接客する一優をチラッと確認した。
(そうだった、私の彼は店頭ではみんなの推しなんだよね。仕方ない…)
「あの、申し訳ないんですけど、これ渡しておいてもらってもいいですか?」
「分かりました」
駒井にお土産を預け、お店を後にした。
帰っていると一優から連絡がきた。
『さっき来てくれてたよね?
接客続きで対応できなくてごめん
お土産ありがとう』
(やっぱ気づいてたんだ)
『こちらこそ忙しい時にすみません
お仕事頑張ってください』
(会いたいけど、私もテスト勉強頑張らないとね)
12月。約束のデート前日の夜、マスク姿で体温計を母に渡すさゆか。体温計には38.1と表示されている。
「風邪ね」
「ゔぅー」
「明日、仕事休もうか?」
「ゔゔん、1人で大丈夫」
「まぁ薬飲んで、1日ゆっくり寝とけば治るかな」
ベッドに入り、朦朧としながらスマホを持つ。
(さいあくだ…せっかくのクリスマスデート前日に体調崩すなんて…。この日のために会えなくても我慢して、テストも頑張ったのにー。はぁ、断りの連絡いれないと。念願の夜景デートがぁ…)
『お疲れ様です。
実は、体調を崩してしまって…。
本当に申し訳ないのですが、明日のデートは無しでもいいですか?』
『え!?大丈夫!?
デートのことは気にしなくていいから
治すこと優先してゆっくり休んで。
お大事に』
一優の返信を確認し、眠りについた。
次の日の朝。寝ているさゆかに母が声をかける。
「仕事いってくるからね!ご飯と薬ここに置いとくから。なんかあったら連絡してね。じゃ、行ってきます」
「んー」
重い身体を起こしお粥を食べ、薬を飲んだ。スマホを確認すると一優から連絡が入っていた。
『おはよう。体調どう?
昨日聞き忘れたんだけど、今日お母さんいる?』
『おはようございます。だいぶ楽になりました。母は仕事に行きました。』
返信を終え、布団に入りゆっくりと目を閉じた。
2時間後。目が覚め、ぼーっと天井を見つめる。
(ゼリー食べたいなぁ。みかんの気分。買いに行く元気…ないけど食べたい。行くにしても外は寒いよね)
外の温度を確認しようと、窓を開けた。
(寒っ。ゼリーは我慢するか)
窓を閉めようとした時
「さゆかっ!」
一優の声がした。
「え…」
周りを見渡すと荷物を持った一優がいた。
「えええ、何してるんですか!?」
「看病する人いないみたいだから、心配で来ちゃった」
「え、あ、風邪うつったら困るし、それに髪とか顔とかボロボロで」
「何言ってるから聞こえないから、玄関行くねー!」
(さっきまで聞こえてたじゃん!もぉー、変なとこ強引なんだからー)
急いで玄関に向かう。
ガチャ。
「どうぞ…」
「お邪魔します」
靴を揃え、中に入る一優。
「すみません、こんな姿で」
「ナチュラルなさゆかも可愛いから問題なし」
部屋に入り、買ってきた差し入れを渡す一優。
「突然来てごめんね。はい、これ」
「え、ゼリー!!嬉しい!すごく食べたい気分だったんです。しかも、みかんと桃のダブルだぁ」
「適当に食べやすいもの選んだけど、以心伝心したみたいで良かった。一緒に食べよ」
ゼリーを食べ終え、満足げなさゆか。
「寝てなくて大丈夫?熱は?」
「さっきまで寝てたんで大丈夫です。ゼリーのおかげもあって、熱はだいぶ下がりました」
一優がさゆかのおでこに手を当てる。
(うわーー、こんなことされたら余計熱上がるんだけど)
「え、熱いじゃん!ほら、ちゃんと休む」
強引に布団に寝させられた。
「お母さん、何時に帰ってくるの?」
「20時位だと」
「じゃあ、19時前には帰るね。時間潰しに雑誌とか持ってきたから、気にせず寝てて」
「ありがとうございます」
身体を横に向けた。
「一優さん…」
「んー?」
「手、繋いでてもいいですか?」
「もちろん」
優しく微笑み、手を握る。
いつの間にか寝たさゆかの横で、空いた片手で雑誌を読む一優。
(懐かしい夢を見た。まだ幼かった頃、父が看病してくれたことがある。
「うぅ、しんどいよぉ…」
「さゆか大丈夫だよ。お父さんがそばにいるから」
「うん」
大きな手で、不安になる私の手を優しく握ってくれた。お父さん…会いたいな)
ゆっくりと目を開けるさゆか。
(寝ちゃってた)
握られたままの手が視線に入った。
(ずっと繋いでてくれたんだ)
「あ、起きた?調子どう?」
「すごく楽になりました」
起き上がるさゆか。
「なら良かった。俺、もうそろそろ帰るから、その前に渡したいものがあって」
鞄から何か取り出す。
「はい」
ラッピングされたプレゼントを渡す。
「え、今年はプレゼント無しって…」
「デートだめになって、落ち込んでるかなと思って。クリスマスプレゼントじゃなくて、元気出してのプレゼントだから気にしないで」
(どこまで優しいのぉ)
「ありがとうございます」
玄関で一優を見送るさゆか。
「本当にありがとうございました」
「全然。俺が会いたかっただけだから。じゃあ、また連絡するね」
ドアに向かい帰ろうとする一優。
「あ」
振り返り、
ちゅっ
おでこにキスをした。
「大好き。…じゃ、お大事に」
ドアが閉まり、おでこに手をあてるさゆか。
(不意打ちは反則ー)