アパレル店員のお兄さんを【推し】にしてもいいですか?
苦いチョコもある
(浮気疑惑?も解決し、スッキリした気持ちでテスト勉強ができる。そういえば、もうすぐバレンタインか。去年はお返しに気を遣わせたくなくて渡さなかったけど、今年は付き合ってるし渡したいなぁ)
バレンタインデー前日の朝。
斜め後ろの席から菅がさゆかに話しかける。
「去年のバレンタインは、女子が男子全員にくれたよなぁ」
「いつも尽くしてくれる男子たちに、お礼も兼ねて渡したからね」
「今年は土曜だし、誰からももらえなかったらどうしよう」
「あはは、矢田くんにお裾分けしてもらいなよ」
「そんな惨めなことできるかよ」
「もぉ、仕方ないなぁ」
さゆかはカバンの中を確認した。
「あった。ごめん、自分用に買ったやつだから、一粒食べちゃったんだけど」
チョコの箱を差し出した。
「え、くれんの!?」
「菅が本命チョコもらえるよう願掛けも含めてね」
「開いてる時点で効果薄いだろ!」
「あははー!でも美味しいよ?」
「味の問題じゃねーよ!」
登校してきた麻由は、2人のやりとりを偶然見てしまい目線を逸らした。
放課後、教室に1人でいる麻由はカバンの中を見ながら考え事をしていた。
ガラガラー
「あれ、水沢どうしたの?」
偶然菅が入ってきた。
「ちょっと忘れ物して…」
「お、奇遇。俺も忘れ物ー」
機嫌良くロッカーに向かう。
「あったあった」
荷物を手にした菅は「じゃ、お疲れ!」そう言い、教室を出ようとしていた。
「菅っ!これ…」
麻由はカバンに入れていたチョコを差し出した。
「おぉ、バレンタインか。さんきゅー!友チョコにしては豪華だな」
受け取ったチョコを見ながら言った。
「…友チョコじゃないよ」
「え、義理なの!?まぁ、それでも嬉しいけど」
「違う…本命…」
「…へ?」
「麻由!?寒いのに何してんの!?」
渡り廊下でぼーっとする麻由に友美が駆け寄る。
「振られちゃった…」
「え!?…告ったの!?」
「告り損ねたのに振られたんだよ…」
麻由の言葉に菅が戸惑っていた。
「…あはは、うそうそ。たまたま豪華なのが残ってただけだよ。矢田くんのチョコの多さに落ち込んだら可哀想だなって」
「なんだよ、びっくりするじゃん。まぁ、矢田に数は勝てねぇけど…価値のある一個を俺は手に入れたからな」
今朝の光景が頭に浮かぶ。
「なになにー好きな子に貰えたの?」
自分の感情を殺し、おちょくるように聞く麻由。
「好きというか、片思いすら幸せに感じる相手だな。まぁ、好きな奴には好きな奴がいるってやつだよ。なんかやつやつ言ってんな俺。じゃ、そろそろ行くわ、お疲れ!」
「そっかぁ…。それはしんどかったね。よく頑張ったよ、麻由」
「片思いで充分だなんて思えないよ。…これ以上想い続けるのは無理ー」
「…食べる?」
チョコを差し出す友美。
パクッ
「ゔぅー、にがぁー」
「カカオ80%だからね。大丈夫、麻由のこと真っ直ぐに想ってくれる人は必ずいるよ」
バレンタインデー当日。さゆかは仕事終わりの一優にチョコを渡すため、アパートに向かっていた。
(一優さんが早番の日でよかった)
「あ」
ちょうど前から一優が帰ってきた。両手で大きな紙袋を抱えている。
(え、それってもしかして…)
「タイミングぴったりだったね」
「お疲れ様です。仕事終わりにすみません」
家の中に入った。リビングに置かれた紙袋をチラッと見るさゆか。中にはチョコの箱やラッピングされたものが入っている。
(!?…やっぱりもらうよねぇ。何個あるのこれ!?え、私の彼氏って一般人よね?…気にしても仕方ない。とりあえずチョコ渡してすぐ帰ろう)
「あの、これ良かったら」
少しよそよそしく渡した。
「ありがと!」
満面の笑みでお礼を言う一優に頬を赤くするさゆか。
「食後のデザートにしようっと」
「じゃあ、私帰りますね」
「もう帰っちゃうの?」
「母がそろそろ帰ってくるので」
「そっかぁ。わざわざありがとね。そうだ、これ良かったらお母さんと食べて」
紙袋を渡そうとする一優。
「え?これお客さんからもらったんじゃ…」
「だって、さゆかからのチョコしか食べないから俺」
(きゅん。もぉーさらっと言うんだから)
「他の人にはお返しもしないから安心してね」
「嬉しいです。そういうとこ好きです…」
照れて小声のさゆかの頭をくしゃっとした。
「…やっぱ心配だし、近くまで送る」
「それだと私が来た意味が…」
ぐっ
さゆかの手を握り、玄関に向かう。
「ほら、行くよ」
(強引なようで優しい手。あぁ、やっぱり好き)
バレンタインデー前日の朝。
斜め後ろの席から菅がさゆかに話しかける。
「去年のバレンタインは、女子が男子全員にくれたよなぁ」
「いつも尽くしてくれる男子たちに、お礼も兼ねて渡したからね」
「今年は土曜だし、誰からももらえなかったらどうしよう」
「あはは、矢田くんにお裾分けしてもらいなよ」
「そんな惨めなことできるかよ」
「もぉ、仕方ないなぁ」
さゆかはカバンの中を確認した。
「あった。ごめん、自分用に買ったやつだから、一粒食べちゃったんだけど」
チョコの箱を差し出した。
「え、くれんの!?」
「菅が本命チョコもらえるよう願掛けも含めてね」
「開いてる時点で効果薄いだろ!」
「あははー!でも美味しいよ?」
「味の問題じゃねーよ!」
登校してきた麻由は、2人のやりとりを偶然見てしまい目線を逸らした。
放課後、教室に1人でいる麻由はカバンの中を見ながら考え事をしていた。
ガラガラー
「あれ、水沢どうしたの?」
偶然菅が入ってきた。
「ちょっと忘れ物して…」
「お、奇遇。俺も忘れ物ー」
機嫌良くロッカーに向かう。
「あったあった」
荷物を手にした菅は「じゃ、お疲れ!」そう言い、教室を出ようとしていた。
「菅っ!これ…」
麻由はカバンに入れていたチョコを差し出した。
「おぉ、バレンタインか。さんきゅー!友チョコにしては豪華だな」
受け取ったチョコを見ながら言った。
「…友チョコじゃないよ」
「え、義理なの!?まぁ、それでも嬉しいけど」
「違う…本命…」
「…へ?」
「麻由!?寒いのに何してんの!?」
渡り廊下でぼーっとする麻由に友美が駆け寄る。
「振られちゃった…」
「え!?…告ったの!?」
「告り損ねたのに振られたんだよ…」
麻由の言葉に菅が戸惑っていた。
「…あはは、うそうそ。たまたま豪華なのが残ってただけだよ。矢田くんのチョコの多さに落ち込んだら可哀想だなって」
「なんだよ、びっくりするじゃん。まぁ、矢田に数は勝てねぇけど…価値のある一個を俺は手に入れたからな」
今朝の光景が頭に浮かぶ。
「なになにー好きな子に貰えたの?」
自分の感情を殺し、おちょくるように聞く麻由。
「好きというか、片思いすら幸せに感じる相手だな。まぁ、好きな奴には好きな奴がいるってやつだよ。なんかやつやつ言ってんな俺。じゃ、そろそろ行くわ、お疲れ!」
「そっかぁ…。それはしんどかったね。よく頑張ったよ、麻由」
「片思いで充分だなんて思えないよ。…これ以上想い続けるのは無理ー」
「…食べる?」
チョコを差し出す友美。
パクッ
「ゔぅー、にがぁー」
「カカオ80%だからね。大丈夫、麻由のこと真っ直ぐに想ってくれる人は必ずいるよ」
バレンタインデー当日。さゆかは仕事終わりの一優にチョコを渡すため、アパートに向かっていた。
(一優さんが早番の日でよかった)
「あ」
ちょうど前から一優が帰ってきた。両手で大きな紙袋を抱えている。
(え、それってもしかして…)
「タイミングぴったりだったね」
「お疲れ様です。仕事終わりにすみません」
家の中に入った。リビングに置かれた紙袋をチラッと見るさゆか。中にはチョコの箱やラッピングされたものが入っている。
(!?…やっぱりもらうよねぇ。何個あるのこれ!?え、私の彼氏って一般人よね?…気にしても仕方ない。とりあえずチョコ渡してすぐ帰ろう)
「あの、これ良かったら」
少しよそよそしく渡した。
「ありがと!」
満面の笑みでお礼を言う一優に頬を赤くするさゆか。
「食後のデザートにしようっと」
「じゃあ、私帰りますね」
「もう帰っちゃうの?」
「母がそろそろ帰ってくるので」
「そっかぁ。わざわざありがとね。そうだ、これ良かったらお母さんと食べて」
紙袋を渡そうとする一優。
「え?これお客さんからもらったんじゃ…」
「だって、さゆかからのチョコしか食べないから俺」
(きゅん。もぉーさらっと言うんだから)
「他の人にはお返しもしないから安心してね」
「嬉しいです。そういうとこ好きです…」
照れて小声のさゆかの頭をくしゃっとした。
「…やっぱ心配だし、近くまで送る」
「それだと私が来た意味が…」
ぐっ
さゆかの手を握り、玄関に向かう。
「ほら、行くよ」
(強引なようで優しい手。あぁ、やっぱり好き)