アパレル店員のお兄さんを【推し】にしてもいいですか?
タイミング
3年1組の教室。真野の机に置かれている部活ノートを見た麻由。
「真野って弓道部だよね?」
「うん」
「弓道とか生で見たことないわー」
「来週引退試合、良かったら来て」
「いいの?」
「待ってる」
「ありがとう。友美たちと行けそうなら行くね」
真野の引退試合当日。さゆか、友美、麻由は試合会場に着き、試合が始まるのを待っていた。
しばらく経つと団体戦に挑む3人が入場してきた。先頭には真野がいる。
(袴姿かっこいいな)
「なんか…シーンとすると余計緊張するね」
「だね」
小声で話すさゆかたち。
真野たち3人が位置につく。
ぐっ…
大前である真野が弓を引き構えた。凛々しい横顔と立ち姿に息を呑むさゆかたち。
スッ、バンッ
放った矢はど真ん中を射抜いた。
「すご…」
麻由が小さく呟いた。その後も的確に射抜き、真野たちは見事試合に勝利した。
試合が終わり余韻に浸っていたさゆかたち。
「いやぁ、初めて見たけど凄かったね」
「みんなかっこよかった」
「あ!」
スタスタと3人の元へ弓道着姿の真野がやってきた。
「おつかれー!凄かったね!」
「ありがと」
友美に返事をした真野は、麻由に身体を向けた。
「水沢」
「ん?お疲れ様」
「好き。付き合いたい」
「えっ」
(!?!?!?)
目の前で告白され声も出ず驚くさゆかと友美。
「返事は今度お願い。じゃ、戻る」
去っていく真野を無言で見届ける友美とさゆか。
「えええええ!?今、何が起こった!?」
「え、やばい!真野が!麻由に!」
興奮する2人と反対に突然の出来事に戸惑う麻由。
帰り道。友美と別れ、麻由にさゆかが話しかけた。
「真野って普段から言葉数少ないけどさ、必要なことをシンプルに言ってるイメージなんだよね。自分の言葉に嘘がないというか…。だから麻由のこと本気なんだなって思った」
「…うん。真野良いやつだもんね。でも今は恋愛として好きじゃないし、付き合うのはどうなんだろ」
「人ごとだから言ってるわけじゃないんだけど、せっかくだし付き合ってみてもいいんじゃない?彼氏としての真野を知って、それでも違うなって思えば別れたらいいのかなって」
「…そうだね。今日正直かっこいいって思ったし」
「あの姿見せた後に告るとか確信犯だよ」
「あはは」
数日後、1組の教室。麻由が帰ろうとする真野を呼び止めた。
「真野、ちょっといい?」
頷く真野。
屋上に着いた2人。
「あの、この前の返事なんだけど…OKです…」
「嬉しい」
少し照れている麻由に手を出し、握手を求める真野。軽く握手をした。
「デートいつ行く?」
「!? あはは」
マイペースな真野に頬を赤くしながら笑う麻由。
期末テストが終わった7月。
「お誕生日何がしたいとか、何がほしいとかありますか?」
「何にもいらないよー。さゆかと過ごせればどこでも」
「それ1番困るやつです」
「うーん、じゃあ…さゆかとしたいこといくつか叶えてもらおっかな」
何か企むような顔の一優。
(嫌な予感がする…)
耳打ちされ、内容を聞いたさゆかは顔が赤くなる。
数日後、さゆかがリビングのソファでくつろいでいると母が声をかけた。
「さゆ、ちょっといい?」
「なぁに?」
母に呼ばれテーブルに向かい合って座った。
「お母さんさ、再婚しようと思ってるの」
「…え!?お母さん彼氏いたの!?」
「うん、2年くらいね」
「気付かなかった…。職場の人?」
「うん。お母さんより5歳下」
「そっか…。なんか結婚するのはびっくり」
「そうよね。元々ね、付き合うのもずっと断ってたのよ。でもあまりにしつこくてさ、もう半分投げやりで付き合いだしたの。プロポーズされた時にもお父さん以上に愛することはできないからって断ったんだけど…それでもいいって。亡くなった旦那さん、君自身、娘さん、その3人を愛してる君でいてほしいって言ってくれたの。僕は君の最後の家族になれたら幸せだ、そう真っすぐに伝えてくれてさ」
穏やかな顔で話す母を見つめるさゆか。
「良い人なんだね」
「うん。もちろん、さゆが反対なら籍は入れないよ」
「…反対するわけないじゃん。ずっと1人で仕事も子育ても全部頑張ってくれて…お母さんが幸せになってくれることが1番嬉しいから」
「さゆ…ありがとう。さゆにも早く会いたいって言ってくれてるんだけど、いいかな?」
「もちろん。あ、実は私も会ってほしい人がいて…」
「やっぱり彼氏いたんだ!」
「え!?気付いてたの!?」
「ふふふ、母親の勘をなめないで」
「さすが。でもね…」
「ん?」
「相手の人…社会人なの。これだけ聞くと高校生と付き合うだめな人って思われるかもだけど、本当に良い人なの。私の気持ちや将来を優先してくれる優しい人で、いつかその人と一緒になれたらって思ってて…」
「…。」
唖然とする母。
(やばい、やっぱり黙って方がよかったかな。どうしよう交際反対されたら…)
「普通の親なら猛反対するかもね。…小さい頃さゆが結婚したくないってよく言ってて、あぁ私のせいだなって思ってた。だからそう思える人と出会えて良かった。年齢なんて関係ないよ、愛する人に出会えるタイミングも一緒になるタイミングも。お母さんとお父さんが学生結婚なの知ってるでしょ?当時は授かり婚でもないのにって周りに言われたけど、何の後悔もしなかった。むしろ早く一緒になったから夫婦として家族として濃い時間を過ごせた。…お父さんにも紹介しないとね」
「うん…ありがとう」
「真野って弓道部だよね?」
「うん」
「弓道とか生で見たことないわー」
「来週引退試合、良かったら来て」
「いいの?」
「待ってる」
「ありがとう。友美たちと行けそうなら行くね」
真野の引退試合当日。さゆか、友美、麻由は試合会場に着き、試合が始まるのを待っていた。
しばらく経つと団体戦に挑む3人が入場してきた。先頭には真野がいる。
(袴姿かっこいいな)
「なんか…シーンとすると余計緊張するね」
「だね」
小声で話すさゆかたち。
真野たち3人が位置につく。
ぐっ…
大前である真野が弓を引き構えた。凛々しい横顔と立ち姿に息を呑むさゆかたち。
スッ、バンッ
放った矢はど真ん中を射抜いた。
「すご…」
麻由が小さく呟いた。その後も的確に射抜き、真野たちは見事試合に勝利した。
試合が終わり余韻に浸っていたさゆかたち。
「いやぁ、初めて見たけど凄かったね」
「みんなかっこよかった」
「あ!」
スタスタと3人の元へ弓道着姿の真野がやってきた。
「おつかれー!凄かったね!」
「ありがと」
友美に返事をした真野は、麻由に身体を向けた。
「水沢」
「ん?お疲れ様」
「好き。付き合いたい」
「えっ」
(!?!?!?)
目の前で告白され声も出ず驚くさゆかと友美。
「返事は今度お願い。じゃ、戻る」
去っていく真野を無言で見届ける友美とさゆか。
「えええええ!?今、何が起こった!?」
「え、やばい!真野が!麻由に!」
興奮する2人と反対に突然の出来事に戸惑う麻由。
帰り道。友美と別れ、麻由にさゆかが話しかけた。
「真野って普段から言葉数少ないけどさ、必要なことをシンプルに言ってるイメージなんだよね。自分の言葉に嘘がないというか…。だから麻由のこと本気なんだなって思った」
「…うん。真野良いやつだもんね。でも今は恋愛として好きじゃないし、付き合うのはどうなんだろ」
「人ごとだから言ってるわけじゃないんだけど、せっかくだし付き合ってみてもいいんじゃない?彼氏としての真野を知って、それでも違うなって思えば別れたらいいのかなって」
「…そうだね。今日正直かっこいいって思ったし」
「あの姿見せた後に告るとか確信犯だよ」
「あはは」
数日後、1組の教室。麻由が帰ろうとする真野を呼び止めた。
「真野、ちょっといい?」
頷く真野。
屋上に着いた2人。
「あの、この前の返事なんだけど…OKです…」
「嬉しい」
少し照れている麻由に手を出し、握手を求める真野。軽く握手をした。
「デートいつ行く?」
「!? あはは」
マイペースな真野に頬を赤くしながら笑う麻由。
期末テストが終わった7月。
「お誕生日何がしたいとか、何がほしいとかありますか?」
「何にもいらないよー。さゆかと過ごせればどこでも」
「それ1番困るやつです」
「うーん、じゃあ…さゆかとしたいこといくつか叶えてもらおっかな」
何か企むような顔の一優。
(嫌な予感がする…)
耳打ちされ、内容を聞いたさゆかは顔が赤くなる。
数日後、さゆかがリビングのソファでくつろいでいると母が声をかけた。
「さゆ、ちょっといい?」
「なぁに?」
母に呼ばれテーブルに向かい合って座った。
「お母さんさ、再婚しようと思ってるの」
「…え!?お母さん彼氏いたの!?」
「うん、2年くらいね」
「気付かなかった…。職場の人?」
「うん。お母さんより5歳下」
「そっか…。なんか結婚するのはびっくり」
「そうよね。元々ね、付き合うのもずっと断ってたのよ。でもあまりにしつこくてさ、もう半分投げやりで付き合いだしたの。プロポーズされた時にもお父さん以上に愛することはできないからって断ったんだけど…それでもいいって。亡くなった旦那さん、君自身、娘さん、その3人を愛してる君でいてほしいって言ってくれたの。僕は君の最後の家族になれたら幸せだ、そう真っすぐに伝えてくれてさ」
穏やかな顔で話す母を見つめるさゆか。
「良い人なんだね」
「うん。もちろん、さゆが反対なら籍は入れないよ」
「…反対するわけないじゃん。ずっと1人で仕事も子育ても全部頑張ってくれて…お母さんが幸せになってくれることが1番嬉しいから」
「さゆ…ありがとう。さゆにも早く会いたいって言ってくれてるんだけど、いいかな?」
「もちろん。あ、実は私も会ってほしい人がいて…」
「やっぱり彼氏いたんだ!」
「え!?気付いてたの!?」
「ふふふ、母親の勘をなめないで」
「さすが。でもね…」
「ん?」
「相手の人…社会人なの。これだけ聞くと高校生と付き合うだめな人って思われるかもだけど、本当に良い人なの。私の気持ちや将来を優先してくれる優しい人で、いつかその人と一緒になれたらって思ってて…」
「…。」
唖然とする母。
(やばい、やっぱり黙って方がよかったかな。どうしよう交際反対されたら…)
「普通の親なら猛反対するかもね。…小さい頃さゆが結婚したくないってよく言ってて、あぁ私のせいだなって思ってた。だからそう思える人と出会えて良かった。年齢なんて関係ないよ、愛する人に出会えるタイミングも一緒になるタイミングも。お母さんとお父さんが学生結婚なの知ってるでしょ?当時は授かり婚でもないのにって周りに言われたけど、何の後悔もしなかった。むしろ早く一緒になったから夫婦として家族として濃い時間を過ごせた。…お父さんにも紹介しないとね」
「うん…ありがとう」