アパレル店員のお兄さんを【推し】にしてもいいですか?

彼の友達

 一優の家で一緒にテレビを観ているさゆか。
ピンポーン
「宅配かな?ちょっと待ってて」
玄関に行く一優。
「何でいるんだよ!」
「びっくりしたー?え、もしかして…」
玄関から一優と誰かの声が聞こえる。
(どうしたんだろう)
ダッダッダッ
ガチャ
見知らぬ男性がリビングに入ってきた。
「!?」
「やっぱり彼女じゃーん!」
「え…」
驚きのあまり固まるさゆか。

 「いやぁーまさか彼女が来てたとは!邪魔してごめんねー」
「いえ。あの、白井さゆかです。よろしくお願いします」
「羽原心也です。よろしくね、さゆかちゃん」
「馴れ馴れしく呼ばないで。というかアポ無しで来るとかなんなの」
「昨日友達の結婚式があって、こっち来たんだよ。せっかくだしと思って店に会いに行ったら、一優休みだって言われてここに来たわけ」
さゆかをじっと見る心也。
「いやぁ、写真で見るより断然実物の方が綺麗だね!」
バッ
雑誌で心也の顔を隠す。
「見過ぎ。見ての通りデート中だから帰ってくれる?」
「そんな冷たいこと言うなよー。あわよくば今夜はここに泊まりたいんだけど」
「は!?俺、明日仕事だよ?」
「早番?」
「遅番だけど…」
「ならいいじゃーん。まだ昼前だしさ、3人で今からどっか遊びに行かない?」
「えっ」
(すごく軽いというか、コミュ力の高い人だなぁ。遊びに…)
チラッと一優の顔を見た。
(うわぁ、すごく嫌そうな顔してる。でも一優さんのお友達と関われるの貴重だよなぁ)
「私は構わないですけど…」
「よしっ、決まり!」
喜ぶ心也とは反対に軽くため息をつく一優。

 「やっぱ3連休中日は、どこも人が多いなぁ」
ショッピングモールを歩く3人。
(一優さんもだけど、心也さんも29歳に見えないなぁ)
「ごめんね、付き合わせて」
「ううん。お友達といる一優さんが新鮮で、見てて楽しいです。地元の友達なんですよね?」
「うん、小中一緒。チャラいけど、良いやつだから安心して」
「ふふっ、仲良しなんですね」

 モール内の飲食店に入った。
「さゆかちゃん、何食べたい?今日は俺が奢るよー」
「いえ、そんな…」
「高校生にお金出させるほど、やばい大人じゃないから!」
(でも…)
一優をチラッと見た。
「デート邪魔されたし、彼女なしの独身だから奢らせておけばいいよ」
「ひでー言い方。まぁ、事実だけども!」

 飲食店を出て歩いていると心也がふと立ち止まる。
「あ!プリクラ撮ろうよー」
「は?おっさんが何言ってんの」
「良いじゃん、今日の思い出にさ!さゆかちゃん、いいよね?」
「はい」
「もぉ…こいつを甘やかしても何もいいことないから」
「さゆかちゃん、どの機種がおすすめ?」
「んーっと…」

 撮り終えた3人。
「ギャハハ、誰だよこれー!本人の面影ゼロじゃん」
(別人だけど、一優さんかわいい)
「ちょっとお手洗い行ってくる。心也、変なことするなよ」
「はいはい。信用ないなぁ」
「…。」
(何か話したほうが…)
「さゆかちゃん」
「あ、はい」
「一優と付き合うの大変だったりする?」
「そうですねぇ、大変というかモテる人なのでそこは心配ですね」
「あはは、さゆかちゃんだってモテるでしょ?」
「いやいや。…いつも優しくて、私に合わせてもらってばかりなので、一優さんこそ大変かもしれないです」
「それは絶対ないよ」
「え…」
「さゆかちゃんのことが、好きで大切で可愛くて仕方ないって、あいつ見てたら分かるもん。ああ見えて子供っぽいとこ多いけど、これからも一優のことよろしくね」
「はいっ」

 「気をつけて帰ってね」
「ありがとうございます」
「着いたら連絡して」
「はい。心也さん、今日はありがとうございました。楽しかったです」
「こちらこそ、突然にも関わらずありがとうー。次は2人でデートしようね!」
「おい」
ぐいっ
一優に首根っこを掴まれながら、手を振り帰って行く心也。
「じゃあねー!」
「…。」
(一優さん、心也さんには厳しい)
苦笑いを浮かべる。

 「お疲れー」
「ん」
さゆかと別れ、一優の家に帰った2人はコンビニで買ったものをつまみながら缶ビールで乾杯をする。
「明日何時に帰るの?」
「一優が家出る時間に合わせて帰るよ」
「了解」
「…良い子だな、さゆかちゃん」
「でしょ」
「相手が高校生って聞いた時は、ピンと来なかったけど、今日2人の雰囲気見てなんか安心したわ」
「安心?」
「真剣だなぁって、続きそうだなぁって」
「あぁ…結婚するって約束してる」
「え!?まじで!?」
「ひとまず来春から同棲して、落ち着いたら入籍するよ」
「え、さゆかちゃん来年から大学生だよね!?」
「そうだよ。周りから見れば不思議かもしれないけど、早く家族になるのが俺たちが一番望むカタチだから」
「そうか。またゆっくりお祝いさせてよ。はぁ…いいなぁー、俺も恋したぁーい」
「あはっ、言葉に重みがないから」
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